2023年10月の発表に合わせて経産省を訪問したホンダの三部敏宏社長(左)と、GMクルーズのカイル・ヴォクトCEO(当時、右)

 米ゼネラル・モーターズ(GM)が無人の自動運転タクシー事業「ロボタクシー」から撤退することで、ホンダは都内で社会実装を目指していた自動運転タクシーサービスの計画見直しを余儀なくされる。GMと傘下のGMクルーズとの3社で共同開発した自動運転専用車両を活用する予定だったが、GMが車両開発中止を決定。ホンダとしての同計画に関する判断と正式な発表は今後行うが、仮に中止としても自動運転タクシーサービスに関する取り組みは継続する考えだ。政府も自動運転による移動サービスの実現に向け、環境整備を着実に進めていく。

 ホンダは2023年10月、GMとクルーズとの3社による自動運転タクシーサービスを26年初頭に開始すると発表。東京・お台場エリアで数十台から有償サービスを開始し、その後は都内で順次エリアを拡大し、最大500台規模での運用を見込んでいた。

 ホンダとしての今後の判断と正式発表については「GMによるクルーズの完全子会社化や組織再編などが完了したことを踏まえた上で行う」(広報部)とする。利用を想定していた自動運転専用車両の開発断念により、計画中止を選択する可能性は高そうだ。ただ、「ホンダは自前でも自動運転の研究・開発などを行っており、自動運転タクシーサービスから手を引くということではない」(同)との考えを示す。

 また、経済産業省や国土交通省など関連省庁も23年11月、自動運転の開発・社会実装の早期実現に向けた環境整備を事業者らと連携して検討するための委員会「レベル4モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」を設置した。議題の一つとして、ホンダ、GM、クルーズ3社の自動運転タクシーサービスを取り上げ、事業化に向けた法制上における課題の論点整理や事業の進ちょく状況などの確認と情報共有を定期的に行っていた。

 今回のGMのロボタクシー撤退を受けて、「コミッティでの議論の進め方に見直しの必要性は出てくるかもしれないが、自動運転移動サービスの実現に向けた取り組みは着実に進める」と関係省庁のある幹部は話す。政府は引き続き、25年度をめどに全国50カ所程度で無人自動運転移動サービスの実現を目指していく。

 クルーズのロボタクシーをめぐっては、事故が相次いだことなどを受け、23年10月末から全米での運行業務を停止。一度損ねた安全性への不信感を回復させることは難しく、経営体制の見直しなども続いていた。

 GMは、ロボタクシー事業撤退に踏み切る理由として、自動運転タクシー市場の競争激化に加えて、事業拡大には相当の時間や費用などのリソースが必要で回収が難しいと説明する。25年上期をめどにクルーズを完全子会社化するとともに、ロボタクシーの開発人員をGMの自動運転開発部門に移行する。これにより個人向けの自動運転車開発や先進運転支援システムの開発を強化していく考えだ。