トヨタ博物館(愛知県長久手市)は、企画展「日本のクルマとわたしの100年」を開催中だ。クルマと女性のかかわりをテーマに集められた車両は、1937年のダットサン「16型セダン」から2021年のレクサス「UX250h」まで、多種多様。貴重な車両や懐かしの車両を楽しみながら、今後のモビリティやダイバーシティ(多様性)のあり方について考える機会となりそうだ。
展示を企画したのは、トヨタ自動車学芸・企画2グループの大石典子グループ長や與語美紀子氏らの女性メンバーだ。「これまでに女性がトライしてきた流れと、現代の多様性推進の流れがリンクするのでは」(大石グループ長)と考え、同館の企画展として初のテーマを掲げたという。
展示ゾーンは①女性ドライバーの誕生②女性ドライバーの広がり③モータースポーツに挑む女性たち④女性をターゲットとしたクルマの一般化⑤女性エンジニアの活躍、そしてさらなる多様性の時代へ―の5つ。女性ドライバー黎明期には、業界誌に「女運転手無用論」が掲載されるなど〝男性社会〟からの反発もあったが、日本初の女性免許証所持者と言われる関根いくさんは、同誌に反論を投書。先駆者として毅然と対応した逸話が紹介されている。
女性ドライバーの広がりに一役買ったのは、ダットサン「16型セダン」。多数の応募者の中から選ばれた女性が「ダットサン・デモンストレーター」として、同モデルで各家庭を訪れ運転指導に当たるなど、女性の自動車愛好家を増やす役割を担ったそうだ。50年代には、女性ドライバーがラリーに参戦。活躍の場所はモータースポーツの世界にも広がっていった。
女性にフォーカスした特別仕様車も登場した。ダットサン「ブルーバード1200ファンシーデラックス」は、ハイヒールスタンドや一輪挿しなど、画期的な内装が目を引く。
80年代には、女優の小林麻美さんをイメージキャラクターに起用するとともに、スカートをはいた女性が乗降しやすいように日本初の〝回転ドライバーズシート〟を採用したスズキ「アルト麻美スペシャル」が登場。ダイハツ「ミラ」などとともに、女性ドライバー市場を開拓した。取材中も「懐かしい! 以前乗っていた」といった声を上げながら、多くの来場者が鑑賞していた。
現代では、女性エンジニアがクルマづくりの現場で活躍する。同博物館では、こうした車両を展示するとともに、マツダの竹内都美子氏、上藤和佳子氏、トヨタの加古慈氏らエンジニアの開発秘話も披露。小柄な人でも運転しやすいシートや視界をさえぎらないディスプレーの配置など、自身の経験も踏まえて「誰もが運転しやすいクルマ」を目指した過程が紹介されている。
多様な人材がアイデアを持ち寄った先に、どんなモビリティが生まれるのか。この先に期待がふくらむ展示となっている。開催は2025年1月13日まで。
(堀 友香)









