交通事故死者の減少ペースが鈍り始めた。昨年は8年ぶりに増加に転じ、今年も13日時点で前年実績を上回った。政府は2025年までに年間死者を2千人以下にする目標を持つが「交通事故ゼロ」までの道のりの険しさが改めて浮き彫りになった。

交通事故死者数は〝交通戦争〟と呼ばれた1970年に過去最悪の1万6765人を記録。その後は官民で「交通安全基本計画」を進め、シートベルト装着の義務化やエアバッグ、衝突被害軽減ブレーキの普及なども背景に減少へと転じる。特に2017年以降は過去最少を更新し続けてきた。しかし、23年の事故死者は2678人と、前年より68人増えた。増加は8年ぶりだ。

コロナ禍の制限が緩み、移動を伴う社会活動が活発化したことなども増加の一因とされるが、保有台数や交通量がほぼ変わらない中、死者数が少なくなるにつれて、削減のハードルが高くなっている側面もありそうだ。

24年は6月13日時点で1065人が死亡し、前年実績を1人、上回った。最近では5月14日に首都高速5号線でトラックが渋滞中の車6台を巻き込む追突事故を起こし、3人が死亡。同じ日の湾岸線でも追突事故が起き、男性が死亡するなどした。

過去5年平均の日別死者数をもとにした「推計年間死者数」は2581人と、まだ前年実績を下回っている。ただ、東京や千葉、兵庫などの都市部で死者数が目立って増えており、予断を許さない状況が続く。