人の行動を予測しながら移動する
現在は監視員が乗車するが、2024年内には遠隔監視システムを導入する予定だ
一般車両との譲り合いもこなす
乗りたい時はタクシーのように手を振って止める
施設内では、CIを使ってモノを運ぶ「ワポチ」の実証も実施

 ホンダは、低速領域の無人自動運転サービスを2025年にも実用化する。「協調型人工知能(CI)」と呼ぶ独自の技術を車両と遠隔監視システムに活用し、歩行者や自転車、自動車の混合空間をドライバーレスで自動走行する技術を開発する。軽微な事故でも大きく報じられ、運行停止を余儀なくされるなど社会的受容性の醸成も課題だが、ホンダの安井裕司エグゼクティブチーフエンジニアは「AI任せではなく、実際にカメラが見た画像をより大切にするシステムの設計が安全性の向上のカギになる」という。

 23年4月、茨城県常総市にオープンした「アグリサイエンスバレー常総」。道の駅や観光農園などの複合施設の中にホンダの開発拠点がある。「ホンダASV―ラボ」だ。

 ホンダが開発するのはマイクロモビリティ「サイコマ」。時速6㌔㍍以下の低速で走る自動運転車だ。自動運転用の高精度地図(HDマップ)を使うことなく、ステレオカメラと単眼カメラで取得した画像データだけで走ることが特徴で、周囲の歩行者や自動車、障害物などを認識するとともに、歩行者や自動車の意図をくみ取って、進路を譲ったり、止まらず進んだりすることができる。

 これまでは、ホンダのスタッフのみが乗車して開発を進めてきたが、2月中旬から一般のユーザーも乗車できるようにする。当初は運転監視員が乗車するが、24年内には遠隔監視システムを開発し、25年にはドライバーレスの自動運転で施設内を移動できるようにする方針だ。

 ただ、自動運転車をめぐっては、同じく低速で「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)の車両を運行していた永平寺町で自転車との接触事故が発生。ソフトバンク系のボードリーも福岡県での実証中にタクシーと接触する事故を起こした。ホンダが26年に東京都心で実用化する自動運転サービスの開発主体である「GMクルーズ」も米国での事故で当局から営業停止を命じられたばかりだ。

 ホンダの安井氏は「あくまで推測」とした上で、こうした自動運転車の事故を「AIへの依存度が高くなりすぎていたのではないか」と指摘する。技術進化が急速に進むAIだが、全ての状況やシナリオに対応できるほど万能ではないという。

 歩道や車道を問わず、誰もが自由に移動できる自動運転モビリティの実用化を目指すホンダ。「目指すところが100とすれば今は30くらい」と安井氏は話す。実証を通じて安全性の向上と社会受容性の形成を同時に進め、実用化を目指していく。

(水鳥 友哉)