ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)による自動車保険金の不正請求問題で、三井住友海上火災保険の調査委員会(委員長=中原健夫弁護士)は12月1日、同社の対応を調べた報告書を公表した。ビッグモーターが保険商品を販売する代理店と整備工場を兼務する存在だったため、三井住友海上としては厳しい対応を取りにくかった、とした。また、再発防止に向け、入庫誘導(修理車の紹介)と保険販売を切り離し、「規制の在り方についても議論があり得るように思う」と結論付けた。

報告書によると、三井住友海上側の入庫誘導数と引き換えに、ビッグモーターから自動車損害賠償責任(自賠責)保険を割り当てられていた。入庫誘導数が少なかったり、保険請求の疑義案件について調査を求めるなど厳しい姿勢を取った場合は、同社の幹部から圧力をかけられたり、自賠責の割り振りを止められたりしたという。ある店舗では、いったん入庫誘導を止めたが、報復として自賠責を止められたため、入庫を再開したケースもあった。

三井住友海上火災からはビッグモーターに対して3人が出向していた。無料通信アプリ「LINE(ライン)」で、不適切事案や車の損傷がないところに、付箋を貼ったりしていることを知っていたが、その都度是正するなどしており、組織的に行っていたとは分からなかったという。

調査委は、ビッグモーターが発覚しないように不正請求を行っていたことから、「内部通報がある前に把握するのは困難だった」と結論付けている。

今後の再発防止策としては、入庫誘導と保険販売を切り離すべきだ、と提言している。「修理工場を兼業する保険代理店からの圧力を遮断し、損害調査・サポート部門は、純粋に顧客に紹介するに値するかどうかで(入庫誘導を)判断できる体制にすべきだ」としている。また、入庫誘導を行う工場について、「対象から外すかどうかなどの明確な基準も設けるべきだ」とした。