公取委は独占状態を問題視するが…

 公正取引委員会は、このほどまとめた「高速道路における電気自動車(EV)充電サービスの実態調査報告書」のなかで、高速道路上の充電器が1社の独占状態にあるとして、高速道路会社に複数の事業者を選ぶことなどを求めた。ただ、充電サービス事業は技術、事業モデルとも確立していない。公取委は道路会社のほか、経済産業省や国土交通省に適切な制度設計の検討を求めたが、充電関連事業者から「今後、技術進歩が一層進むことが見込まれる中で、利用者が少なく儲からないところにまでEV充電器を網羅的に設置しなければならないのが参入条件だとすると非効率だ」との声もあった。

 報告書によると、高速道のサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)におけるEV充電器は、今年3月末で445基(設置口数は536口)ある。このうち、自ら投資してEV充電器を設置・運用する事業者を指す「EV充電設置者」の内訳はeモビリティパワー(eMP、四ツ柳尚子社長、東京都港区)が439基で全体の98・7%を占めた。残る6基は高速道路会社の設置分だ。eMPは充電サービスも提供する。

 この背景には、高速道路会社3社(ネクスコ東日本、中日本、西日本)とeMPの前身である日本充電サービス、ジャパンチャージネットワークが10年前に結んだ共同事業に関する協定がある。主に高速道会社がEV充電器の駐車マスの整備を、eMPが充電器の設置・運用を行うとするもので、この協定の締結以降、公募は行われていない。充電器の更新も協定に含まれており、2025年度までに約1100口の新規設置を予定している。

 公取委は「eMP以外のEV充電器設置者が、高速道路のSA・PAにEV充電器を設置することが想定されているとは言い難い」と指摘する。ただ、高速道路会社が公募した約10年前は、EV充電設置者となり得る事業者が事実上、eMPに限られていたことも事実だ。政府が「50年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」を打ち出す前から、前身企業とeMPは充電器の設置を進めてきた。公取委は「一定の貢献があったと評価できる」としつつも「事業者の創意工夫による多様なサービスが出現しづらい」と指摘した。

 公取委の聴取に対し、eMP側は「工事費用に対する補助金額が他の設置場所に比べて高いが、当社が負担する金額も多いのが現状だ。設置後の運用コストも高い。それでも社会インフラとして欠かせないため、EVの普及に先行して全国のSA・PAに設置を進めてきた」と説明した。

 公取委は、経産、国交の両省への申し入れのほか、日本高速道路保有・債務返済機構において、高速道路のSA・PAで充電器を設置する際に参照すべき法令や通達などを公表することも求めた。このほかにも、高速道路の路外に設置された充電器を活用するための一時退出について、「可能な限り、大きな設備投資を必要としない方策を検討し、ETCカード以外の決済手段も認めるようにすることが競争政策上、望ましい」とした。

 eMPの四ツ柳社長は「企業や業種の垣根を越えて皆で共有すれば利用者のコストが下がり、電力負荷や二酸化炭素(CO2)排出も減る。なるべく少ないインフラで皆がハッピーな状態をつくることが大事だ」と過去に本紙の取材に語った。公共用の充電インフラは、費用対効果の観点からも事業者間の相互利用などが求められるが、競争政策との兼ね合いが悩ましいところだ。