電気自動車(EV)シフトが、日本の道路環境に適したBセグメント車市場にも波及しつつある。ボルボ・カー・ジャパン(VCJ、マーティン・パーソン社長、東京都港区)は、このクラスのEVを年内にも国内導入する方針を固めた。国内のEV市場はCセグ車以上が大半で、Bセグ車には目立った競合車種が存在しない。VCJは日本のユーザーが扱いやすい新モデルを訴求することで、先行者利益の獲得を狙う。足元では軽自動車のEVが存在感を出しているが、上級クラスとのサイズや価格のバランスに優れるBセグ車が普及すれば、市場のさらなる盛り上げに一役買いそうだ。
VCJが新たに投入するBセグのEVは、SUVタイプになるとみられる。スペックを含め、詳細は明らかになっていないものの、2022年11月にボルボ・カーズが実施した旗艦SUV「EX90」のオンライン発表会で、23年内に登場予定の新型車の一つとして車影が公開されていた。今年夏ごろをめどにグローバルで発表される見通しで、パーソン社長は、国内でも「年末までに納車を開始したい」と意気込む。
VCJでは現在、CセグのEV「C40」「XC40」を国内販売している。22年のEVの販売台数は925台。新車供給難などの逆風もあったものの、25年にEV販売を1万台とする目標からは乖離(かいり)している。このため、EVの販売体制の整備と合わせて、ラインアップの拡大を急ぐことで目標達成につなげる。新型車は、輸入EVで当面の競合と見込まれるメルセデス・ベンツ「EQA」などよりもコンパクトかつ、価格も抑える見通し。VCJのEV販売の拡大を支える戦略車種としての期待も高い。
国内のEV市場は現在、比較的車体サイズの大きなモデルが中心となっている。ボルボのC40とXC40の全長は4440㍉㍍、全幅は1875㍉㍍に上るほか、日本勢もトヨタ自動車の「bZ4X」や日産自動車の「アリア」が同等の車格となっている。半面、小柄なEVはフィアット「500e」やホンダの「ホンダe」、軽の日産「サクラ」と三菱自動車の「eKクロスEV」などに限られているのが現状。事実上、〝二極化〟傾向が色濃いだけに、日本の道路環境に適した取り回しに優れるBセグ車は、大きく成長する可能性がある。
今後、国内外のメーカーが日本にBセグの新型EVを逐次投入すると見込まれる。中国・比亜迪(BYD)も、新型「ドルフィン」を国内販売する計画だ。こうした中、VCJは早期の商品展開で優位性を確立し、EVブランドへの円滑な移行に弾みをつけたい考えだ。
(内田 智)