戦略的価値の創造へ
中小企業の持続的成長をシステムや販促・ウェブツール、課題・解決の共有、ファイナンスなどで支援するバリューアップ・ジャパン(VUJ、樋口昭久代表理事)では、整備や車販などの自動車のアフターマーケットの事業者が顧客視点でモビリティ時代を豊かにする活動支援を展開してきた。コミュニケーションを基軸に顧客を面でカバーする〝モビリティプラットフォーム〟の実現に向けて、顧客や地域の声に寄り添う持続可能な仕組みの構築を各地域で加速させる。
VUJの設立母体は、1990年に創業した自動車ビジネス向けエリアマーケティングのシステムの提供や受託を手掛けてきたプラネットだ。2012年にVUJを立ち上げ、翌年には経営革新等支援機関(中小企業経営力強化支援法)、中小企業・小規模事業者ビジネス創造等支援事業支援機関に認定。その後、中小企業庁の地域プラットフォームの代表機関としてカービジネスを展開する企業の支援を行ってきた。樋口代表は「高齢化や人口減少などさまざまな課題が間近に迫っている中、安売りや大量売りは悲劇しか生まない。現在から将来のお客さまづくりをするために量から質へと自社のブランディングを構築するのは今がチャンス」と強調。そこで、15年から戦略的な価値創造に向けて「TCS(トータルカーライフサポート)研究会」を立ち上げた。
LTVの変化に対応、顧客を面でカバーへ
TCS研究会は、社会的価値と経済的価値の創造と共に〝顧客満足の追求・社員満足の追求・顧客生涯利益の追求〟を進めることで持続的な成長を目指している。研究会員は、東京オート(栃木県小山市)やナオイオート(茨城県取手市)、オートセンター新生(埼玉県鶴ヶ島市)、トータス(神奈川県大和市)とアクセルオート(東京都青梅市)など、これまでも顧客や地域に寄り添い密着した経営を実践している企業が参加している。これらの企業がモビリティサービスの新たな取り組みなど組織や個人のイノベーションを生み出している。
樋口代表は「100年に一度の大変革期で、保有ビジネスの市場縮小は続く。25年~30年に向け、これまでの事業者側のルールに基づく販売・車検・保険といった点のアプローチではなく、顧客心理や地域ニーズに合わせて、顧客情報をしっかりと獲得蓄積して利活用し、付加価値向上につなげる施策が重要」と取り組む。例えば、自動車メーカー系では顧客満足向上に向け、系列の統合やコネクテッドサービスの拡大による情報の集約化が加速傾向にある。一方で消費者に寄り添う役割のはずの自動車販売店では、量を追求する価格訴求の専門店や大型拠点化が多く、集約したコネクテッド情報を活かす体制が整っていないのが実情だ。整備事業者では、特定整備対応や整備人材の不足化と課題は多い。そこで研究会では、目先の状況だけでなく、中長期を見据え、顧客・地域視点を強化・定着することで、顧客一人ひとりとのつながりを深め、LTV(顧客生涯価値)の変化に対応する体制づくりを進める。現時点で〝顧客視点のバリューチェーン戦略〟を軸に、車販、車検整備、保険、MaaS(サービスとしてのモビリティ)、地域共創をエリアで支える事業展開の可能性を高めている。新規顧客づくりの追求から既存客の深堀りに向けて、事例なども踏まえて連載で紹介する。
次回は1月25日に掲載予定