〝カイクラ〟で一人のお客様に店舗全体での対応が可能に
ボルボ事業本部の影山佳彦本部長

 ボルボ・カー・ジャパン(VCJ)正規ディーラーとして大阪市内を中心に6拠点を展開するロードカー(柏原隆宏社長、大阪市西区)。2012年に法人新車販売台数全国トップを獲得。今年はVCJが2年に1度、テクニシャン(メカニック)を参加対象として開催する技能大会「VISTA2022」日本決勝大会・サービスリペア部門で優勝拠点チーム(ボルボ・カー東大阪)を輩出するなどその技能レベルは高く、顧客から厚い信頼を集める。足下では新車購入検討客の平均来店回数が減り、日頃の電話応対品質の重要性が増すなか、シンカ(江尻高宏社長、東京都千代田区)が提供するITツール「カイクラ」が同社の業務運営を語る上で欠かせない存在となっている。

電話を取る前に誰からのコールか事前に把握。〝電話のみえる化〟を実現

 カイクラは〝会話クラウド〟の略。既存の車両管理ツールや顧客管理ツールと紐づけることで、着信時に相手の情報を瞬時にパソコンブラウザに表せる。つまり、受電前に誰からのコールか事前に情報が把握できる。「電話のみえる化」を可能にする。
顧客リストには名前、車種、ナンバー、営業担当者名、車検到来日、保険満了日などの情報に加え、現在の対応状況などが確認できる。

受電前に相手と内容がわかることは顧客と自社双方のストレス軽減に

 同社は他県のボルボ販社からの紹介でカイクラを知り、まずは実験的にと1店舗に導入。当時、すでに〝ナンバープレート読み取り機〟を導入し、顧客の来店時に、名前を呼んで出迎える体制を整えており、「カイクラに対し同じ効果が見込めるのではないか」(ボルボ事業本部の影山佳彦本部長)と考えたのがきっかけだ。
 電話に出る前に、それが誰からの電話で、どのような用件なのか事前にわかるということは、「お客様はもちろん、店舗スタッフのストレスを軽減できると実感した」(影山本部長)と当時を振り返る。
 特に「Z世代」と呼ばれる10代後半から20代半ばの若手社員にとってその効果は目に見えて大きいものがあった。この世代は最初からスマートフォンを所有するのが普通で、〝知らない番号から電話が掛かってくること〟に対して免疫がない。
 影山本部長は「彼らは会社に入り、知らない番号からの電話に出るということを初めて経験する。そのストレスは我々世代と比較すると極めて大きい。電話が怖いという話も聞く。今後、こうした世代の社員数は間違いなく増える。彼らを救うツールとして、その価値は今以上に大きなものとなる」と強調する。
 業務効率を語る上でもその効果は大きい。導入前、電話が掛かってきた際、それが誰に対する電話なのかを確認するため、20人いるスタッフ全員の仕事の手を一瞬止めてしまっていたが、「それがなくなり、電話の受け手が顧客とのコミュニケーションを途切らすことなくスムーズに担当者につなげるようになった」(影山本部長)。

カイクラ・メモ機能を活用し、顧客情報・ステータスを一元管理化

 カイクラは「履歴機能」「メモ機能」「SMS機能」など様々な機能で構成されている。
 同社現場では「特にメモ機能が大きく役立っている」という。この機能は、例えば〝顧客の自社担当者〟、商談中や点検・車検予約待ちなど〝お客様の状況〟が一目で把握できるようメモで残せるというもの。顧客とどのような会話をしたか、何をテーマとしたかなどのメモを徹底することで情報を蓄積し、販売戦略に生かすことも可能だ。
 また最近は開封率が高いとされるSMSを活用した「SMS機能」の利用徹底に力を入れ始めている。点検・車検、オイル交換などのお知らせを効率良く発信できる。合わせて発信したお知らせに対する顧客の反響の大きさなどの情報も獲得可能だ。

オンライン販売の本格化で増すカイクラの重要性

 自動車ディーラーを取り巻く環境は大きく変化している。車両購入検討客の動きをみてもここ10年で大きく変化し、平均来店回数は1.6回と2回を下回る状況だ。車両の基本的な情報を調べた上、どのような車両を購入するか、すべてを決めてから来店するためだ。最初の1回で購入を決めてもらわなければ、その購入確率は5割以下にまで下がる。
 このため、スマートフォン上の動画での検索結果における上位での出現や口コミで話題に上ることの重要性が増している。
 一連を背景に同社ではインスタグラムを始めとしたSNSを活用したPRに注力し始めた。新たに専任担当者として〝マーケティングスペシャリスト〟を本社に置き、各拠点それぞれのショールームスタッフとペアとなり、拠点ごとに様々な施策を模索する。
 自動車の販売手法も〝オンライン販売〟が本格化しようとしている。今のところ、EV(電気自動車)2車種に限定されているが、2030年までに販売する車両すべてを電動化にする方針を示している。
 影山本部長は「オンライン販売が主流になった場合、ディーラーの役割は大きく変わる。セールスの役割もオーナーフォローがメーンになる。こうした商環境下では高品質な電話応対の重要性が一層増し、カイクラが果たす役割もますます大きくなる」と指摘する。
同社ではカイクラとともに、既存客との関係性強化はもとより、さらなる顧客創造に向けた取り組みを加速させたい考えだ。