市井明俊(いちい・あきとし)社長

 ―部品供給難など、さまざまなリスクが続いている

 「需要変動のリスクや災害の経験など、2011年の東日本大震災を含めて、くぐり抜けてこられた自信と予期せぬことが起きた時に対処する能力は十分育ってきた。一つ一つの課題として真摯(しんし)に受け止めている」

 ―コロナ禍対応とこれまでの経験との違いはあるか

 「グローバルに発生している点だ。ここ10年くらいで各地域の危機管理体制を整えていたが、活用したことはなかった。最初は手探り状態だったが、グローバルに情報交換できることで、危機管理のネットワークが実際に機能した」

 ―アフターコロナを見据えた取り組みは

 「カーボンニュートラルを含めた環境への取り組みとデジタルへの取り組みになってくる。(コンピューター上で現実世界をつくる)デジタルツインもその一つとなる。世の中は常に変化している。われわれも時代に合わせて変化しなければ、変化する時代に乗り遅れてしまう。100年先も世の中から必要とされ、信頼されて、選ばれる企業であり続けるためには、変わり続けることが必要だ」

 ―中期経営計画で取り組んでいくことは

 「『収益ある成長』『ESG経営』『経営資源の強』の三つを経営課題として取り組み、発展させていく。その一つESG経営で特に大きな柱となるのがカーボンニュートラルであり、今後、対策を進めていく」

 ―電気自動車(EV)化への対応は

 「(EVに関わる)新製品をいろいろなところで提案し始めており、日本の自動車メーカーに限らず海外のメーカーにも提案している。来年度から始まる中期経営計画の中では、それを一つでも二つでも世の中に認めてもらってビジネスの一つの種として育てていきたい」

 ―具体的にはどのような製品の開発に注力しているか

 「当社が開発しようとしているのは、eアクスルそのものではない。システムや効率的に動くようなメカニズム、部品などを売っていきたい。それに当たるのがトラクションドライブやパワースプリット、モーターの回転数の最適化を補助するセンサーだ。このほかにも、多様なニーズがあると想定される。市場と対話しながら提案していく」

 ―部品の採用時期はいつを狙っているのか

 「今後、できれば3~5年以内にしていきたい。ティア1(1次サプライヤー)やティア2(2次サプライヤー)に提案しており、OEM(自動車メーカー)に直接提案する場合もある」

 ―コロナ禍での働き方に変化はあるか

 「『ダイレクトコミュニケーション』を大切にしている。面直を主体としながら、在宅勤務の利点も生かしている。創造的な仕事をするならば面直が大切だ」

 ―EV化が与える影響をどう捉えているか

 「EV化によって軸受の事業は3割減るが、車載モーターで10~15%、残りを新製品プラスアルファで取り戻し、3割減った分以上にしていきたい」

 《記者の目》日本精工はカーボンニュートラルやデジタル対応に積極的な姿勢を見せている。来年度からスタートする新しい中期経営計画では、これらに関する取り組みを加速させていく。あわせてEV関連の部品の開発、提案にも注力しており、電動化においても同社製品の存在感が高まっていきそうだ。

(織部 泰)