近畿経済産業局は、中小・中堅企業を支援対象とする経済産業省の事業「ミカタプロジェクト」で、「自動車の未来像を描く」をテーマに京都市内でセミナーを開催した。電動化・知能化の動向やトランプ米政権による関税政策の影響、自動車メーカーの技術戦略など、注目度の高い内容とあって、部品サプライヤーをはじめとする多くの自動車関連企業が参加した。

 京滋地区の支援拠点である京都高度技術研究所(ASTEM)が、同プロジェクトの普及啓発事業の一環として、7月18日に開催した。

 前半で講師を務めたPwCコンサルティングの森脇崇シニアマネージャーらは、昨今の情勢を踏まえ、部品サプライヤーの事業転換の必要性を指摘。米国の自動車への追加関税など各国の保護主義的な政策により、コスト低減活動や価格転嫁による対応のほか、中長期的には生産・開発の現地化への備えが求められるとした。

 SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)化により、中国・華為技術(ファーウェイ)のように、自動車メーカーにソフトウエアとハードの両方を供給するサプライヤーの事例も挙げ、自動車メーカーとの関係性が変化しつつあることを示唆した。

 後半は、マツダの電動化事業部開発・ものづくりセンターの三好誠治センター長が、同社の「ライトアセット戦略」の一環として取り組む「ものづくり革新2・0」について説明した。同社はこれまで多様な車種を一括企画により、開発・生産コンセプトを全車種で共通化し、開発期間の短縮を進めてきた。2・0では、複雑化する車両開発に対応するため、モデルベース開発を進化。AI(人工知能)も導入し、稼働率の高い混流生産を実現している。

 三好氏は一連の取り組みの成果として、「ICE(内燃機関車)とEV(電気自動車)の混流生産ができる体制が整った」とし、今後はサプライチェーン全体で効率化を目指す方向性を示した。

 ASTEMでは、普及啓発事業のほかに、京滋地域に拠点を持つ部品サプライヤーに対し、新商品開発や業態転換を支援するため、専門家を派遣する事業を行っている。孝本浩基本部長は「ミカタプロジェクトをうまく活用して、自社の事業に役立ててほしい」と参加者に呼び掛けた。