小回りの利く電動キックボードは移動手段として定着した
都内を中心に貸し出し拠点が増加している

 電動キックボードなどの特定小型原動機付自転車(特定小型)は、16歳以上であれば運転免許が不要など利便性の高さが支持され、利用者が広がっている。一方、警察庁によると、2024年7~12月の交通違反の検挙数が前年同期の3倍超となる2万3128件に急増。事故も約2.4倍の204件発生するなど、交通社会に悪影響も生じ始めている。こうした事態を受け、特定小型のシェアリングサービスを手掛けるLuup(ループ、岡井大輝社長、東京都千代田区)は、危険な運転を行うユーザーの排除も視野に入れた安全対策の強化に乗り出している。

 23年7月に施行した改正道路交通法で、電動キックボードは新設された特定小型に定義された。従来は原動機付自転車(原付)に位置付けられていたが、特定小型になったことで交通ルールなどが緩和。利用しやすくなったことで、需要が拡大した。

 ただ、厳しい目線も向けられている。例えば、特定小型になって歩道での走行も可能になったが、この場合は時速6㌔㍍に抑えるなど歩行者の安全確保に配慮する必要がある。こうしたルールを守らない一部のユーザーによる危険な行為があるのも事実だからだ。

 ループはこれを重く受け止め、新たな安全対策を4月下旬に導入する。その一つが、全地球測位システム(GPS)を用いて、利用者の危険な運転を検知する仕組みだ。例えば、特定小型が走行できない道路への進入や、大通りでの逆走などを認めると、利用者に警告やアプリの利用停止措置を科す。悪質なユーザーをあぶり出すことで、交通安全に貢献する。まだ対応可能なエリアは限られているが、順次増やしていく方針だ。

 加えて、利用の際に必要な「交通ルールテスト」の難易度を5月から引き上げる。従来は出題の順番が固定され、内容も比較的簡単なものだった。5月以降は順番をランダムにし、設問数も増やす。難易度についても「明確に向上させる」(岡井社長)という。既にテストにパスしているユーザーの再受験も義務化し、サービス利用者全体の交通安全への意識を底上げする考えだ。

 警察庁の発表によると、24年の特定小型による交通違反の検挙件数は4万1246件だった。交通事故は338件で、利用者が増えていくのに応じて拡大していく傾向にある。これらすべてがループの利用者ではないものの、岡井社長は「(ループでも)違反走行や交通事故が増えているのは事実」とし、率先して対策を打つ。

 この背景には、電動キックボードをはじめとする新たなモビリティの普及を目指し、国に働きかけていた事業者の一つが同社であることも大きい。特定小型化されたことによる需要拡大の波に乗り、25年3月時点で約1万2千拠点の貸し出し拠点があり、ユーザー向けのアプリのダウンロード数も400万を超えるなど、業界トップクラスに成長した。安全対策でも先手を打つことで、特定小型のシェア事業者としての責任を果たす狙いがある。正しく利用するユーザーを増やすことで、国内に特定小型を根付かせたい考えだ。

(舩山 知彦)