国内メーカーによる完成車のOEM(相手先ブランドによる生産)関係は、大きくトヨタ陣営、日産陣営に大別できる。中でも積極的なのがトヨタ陣営で、相互出資関係もてこに幅広く車両のOEM供給関係を結んでいる。さらに2021年春にはトヨタ、日野自動車、いすゞ自動車、ダイハツ工業、スズキの5社で商用車連合(技術企画会社)、コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT、中嶋裕樹社長、東京都文京区)を設立した。このCJPTの枠組みで燃料電池(FC)トラックや軽電気自動車(EV)トラックなどの実装を目指している。

 OEMはもともと、自社にない商品ラインアップを補完し、顧客を囲い込む効果が見込める。その分、利幅も薄いわけだが、近年は日産と三菱自動車が「NMKV」をつくって軽EVを共同開発したり、トヨタとスバルが後輪駆動(FR)スポーツカーを共同開発したりと、互いの経営資源を持ち寄って販売リスクを分散しようという自動車メーカーも増えている。トヨタは、この手法をBMWともスポーツカー「GRスープラ」でも採用している。

 今後の注目は、三菱ふそうトラック・バスと日野自動車の経営統合だ。両社の親会社であるトヨタ自動車とダイムラートラックが持ち株会社を新設し、2社を傘下に入れる。持ち株会社は日本での上場を予定する。開発や調達、生産領域で協業するとともに、トヨタとダイムラートラックは水素をはじめとする商用車向けの次世代技術開発でも協業する。三菱ふそうと日野は、24年末までの統合完了を目指す。

 日野といすゞは折半出資でバス製造会社「ジェイ・バス」を持ち、CJPTの枠組みでも協業関係にある。いすゞの南真介社長兼最高執行責任者(COO)は「これから三菱ふそうとの関係がどうなるかというと、お客さまにとって、商用車メーカーがやらなければいけないことはかなりある。協調と競争の関係は続けていきたい」と話すが、親会社の意向も含め、先行きは見通しにくい。

 したたかなOEM戦略で知られるのはスズキだ。マツダ、日産、三菱へ車両をOEM供給する。かつてはもっと多く、ゼネラル・モーターズ(GM)など海外勢に供給していたこともある。「OEMは1車種で2社まで」(鈴木修相談役)といった独特の〝内規〟もあった。

 完成車に限らず、エンジンや変速機など部品単位の取引を含めてOEM案件は世界的に拡大傾向にある。ただ今後は、構造がシンプルとされる電気自動車(EV)シフトに伴い、設計は日本、生産は海外といった役割分担や、鴻海精密工業傘下のフォックスコンによるEV開発プラットフォーム「MIH」など、新手も登場し始めた。設計や製造をめぐる企業間の関係はますます複雑になりそうだ。