モーターチェアやセニアカーの技術を応用し、新たな可能性を探る

 スズキは、電動車いすの駆動ユニットをロボット向けに展開し、AMR(自律走行搬送ロボット)業界に「電動モビリティベースユニット」として売り込む。農業や配送向けで実証を重ねており、完成度を高めて将来的な事業化を目指していく。

 開発したユニットは、同社の「モーターチェア」や「セニアカー」といった電動車いすの足回り部品を活用する。AMRを手がける企業に基幹部品として提供する考え。実証では、幅600×長さ900㍉㍍、幅900×長さ1200㍉㍍の2種類を用意したが、用途や顧客に応じて機動的に見直していく。バッテリーは、コストを抑えるため電動車いすと同様に鉛蓄電池を用いる。容量は35㌂時。平坦路で約40㌔㍍の航続距離を持つ。

 すでに実証を行っている農業や配送用ロボットの基幹部品として実用化を見込むほか、工場内の搬送用や不整地での活用も視野に入れる。特に工場間では「雨天時や足場が悪い場所でも走れる」(同社)という強みを生かす。

 AMRを手がける企業は、高度な自動運転技術などソフトウエアを強みとし、車体や駆動系などは外部調達する企業も多い。スズキは、50年近く電動車いす事業を手がけ、年間で約1万台のセニアカーを販売する。こうした技術や量産設備を生かし、駆動系部品の新たな可能性を探る。担当者は「できれば3桁(100万円)は切りたい。他社には負けないくらいの価格で出すつもりで、どれくらいの価格なら買ってもらえるか調査したい」と語った。

 今後は、AMR用自動運転技術も社内で対応できるよう体制を整える考えだ。