自動車リサイクル事業者にとって、事業の柱であるリサイクル部品の基となる使用済み車の確保が依然として難しくなっている。各事業者は収益の確保に加え、人材不足などの諸課題の解決につなげるために、工程の見直しや新事業立ち上げなどさまざまな手を打っている。
トラックのリサイクル部品販売などのカネタニ(金谷正永社長、福岡県久留米市)は、使用済み車の確保が難しいことから、素材ごとに分別、再販できるように解体作業の見直しに着手した。例えば、これまで捨てていた金属製の鍵の回収を9月から始めた。ペール缶に集め、まとまった量にしてから素材として販売する考えだ。また、車から取り外した状態で業者に引き取ってもらっていたハーネスも、素材ごとに処理することで再販を目指している。
「トラックは素材のかたまり」(金谷社長)との考えから取り組んでいるもので、「今まで捨てていたものも金になる」(同)ことを社員に意識付けしていく。
新規事業に乗り出すリサイクル事業者もある。鴨下商店(鴨下治郎社長、埼玉県狭山市)は2023年11月に日高農園(同、埼玉県日高市)を立ち上げ、農業に参入した。日高市内の2カ所の農場で野菜を栽培するほか、ビニールハウスでイチゴも育てている。
イチゴの栽培では、リサイクルの過程で発生した使用済みのオイルを活用している。病害にも見舞われたものの、初年度は約1トンを収穫して顧客などに無料で配った。2年目は1年目の3600株から倍増近い7000株に増やし、27年に販売する予定だ。
また、人材不足に悩む事業者が少なくない中、リサイクルガレージケーワン(牛場健次社長、千葉県船橋市)は、創業当初から「社員がやめない会社」を目指してきた。年間休日を120日に設定するなど、給与や待遇の充実に力を入れる。制度面だけではなく、普段から社内でコミュニケーションを取ることで、社内のトラブルを減らすことも意識している。
牛場社長は、社員が退職することで新しい担当者に仕事を一から教えることが大きなロスになると考えている。また、弁護士だった父親から、労務トラブルのデメリットも聞いていたことも取り組みの背景にある。「社員がやめたくない会社にする努力」(牛場社長)を続けてきたことで、ある日突然退職を表明したり、退職代行サービスを利用したりして会社を去る社員はいない。前職との待遇の差に驚く中途入社の社員もいるほか、産休・育休制度を利用した社員はすべて、職場に復帰しているという。
整備戦略10月号では特集「自動車リサイクルの今とこれから」を掲載します。


















