人材不足と並ぶ自動車整備業界の大きな課題が、夏の暑さ対策だ。2025年に法律で熱中症対策が義務付けられたこともあり、暑熱対策への関心が高まっている。工場を冷やしたり、整備士視点での対策など、さまざまな手段が実用化されており、個々の事情に合った効率的な方法を選べるようになった。整備士の労働環境の改善につながれば、新たな人材確保につながる可能性もある。
整備工場で良く使われているのは、特定の箇所を冷やせるスポットクーラーだ。スペースが広く、車の出入りも頻繁にある工場全体を冷やすことが難しいケースが多いことから広がってきた。しかし、通常の空調(エアコン)ならば室外機から排熱するものの、これがないスポットクーラーは排気口から出る熱が課題となっていた。
そこで、ブラザー工業は自社のプリンターなどに使っている基盤から出る熱の処理技術を応用。排気口から暖かい風を出さない「ピュアドライブ」を開発した。その後、フォークリフトに対応した仕様も用意するなど、バリエーションを広げている。
整備士の首元を冷やすことに注目したのが、ゼネラル(蛭子毅社長、川崎市高津区)だ。同社が販売している「ウェアコン」は、エアコンやスポットクーラーの風が届かなくても快適に過ごせる。これまでに800社以上が導入しており、ある整備事業者は休憩時間などに体を冷やす手段としても活用しているという。
スポーツ用品のミズノは、18年から作業服の分野に参入している。24年に発売した電流を流すことで冷却・過熱が行えるペルチェ素子を活用した「アイタッチデバイス」シリーズで、暑熱対策を呼び掛ける。同社の体を効率的に冷やすノウハウを生かした「クーリングボディマップ」に基づいており、製品の改良にも役立っているという。
補修用塗装ブースを手掛けるアンデックス(吉田伸社長、広島県尾道市)は、冷風と送風を分けて塗装ブース内に送り込める「CAB-SP」を販売している。密閉したブース内でも、作業者に涼しい風が当たるようにしたことで、塗装の環境改善につなげた。吉田社長は、ブースの中で塗料を吹き付ける人が求めるのは「温度よりも涼感」とし、開発に当たっては温度と湿度のバランスがポイントの一つだったと話す。
茨城いすゞ(豊崎繁会長兼社長、水戸市)は、今春リニューアルした下館サービスセンター(茨城県筑西市)にエリア空調機を導入した。整備士が点検や整備などで車の周りを細かく動くため、工場全体を涼しくした方がよいという判断だ。
同社はほぼすべてのサービスセンターに空調を導入しており、シャッターを閉めれば真夏でも整備士は汗をかかずに仕事ができるようになったという。同センターの岡本明センター長は、採用活動においても「(求職者から)冷暖房完備が求められている」としており、今後も熱中症対策に力を入れていく考えだ。
整備戦略6月号では特集「“涼しい作業環境”をつくり上げる」を掲載します。



















