連載「銀幕の名車たち」アナザヘヴン × シビック4ドアセダン 刑事と犯人の格闘の見せ場をつくった車

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  • 2026年8月22日 05:00

殺人犯を追う若い刑事が犯人を見失い、その状況を捜査本部に連絡しようと捜査車両「シビック4ドアセダン」へと戻ってきた。彼は運転席に乗り込み、無線機のマイクを手にした。すると突然、何者かに後ろから首をつかまれた。それは後席に潜んでいた犯人の若い男の手だった。彼は拳銃を抜くが、犯人に羽交い絞めにされた。映画「アナザヘヴン」の中で起きた刑事と犯人との格闘シーンだ。

自動車の車内での格闘シーンは、動きに派手さがないケースが多い。だが手に汗握る場面となり、それぞれの映画作品によって車内という狭い空間での攻防に工夫がみられる。アナザヘヴンでは、窮地に陥った刑事がアクセルを踏んで車両を急発進させ、車両は前方に駐車していた4ドアセダンの三菱自動車「ギャラン」(6代目)の側面に激突。その衝撃で刑事は車外へと逃れて危機を脱した。スピードを出すようなカーアクションではないが、自動車を用いて一つの見せ場をつくっている。

【ストーリー】

東京都世田谷区のアパートの一室で、脳みそが抜き取られた死体と料理された脳みそのシチューが見つかった。この猟奇的殺人事件の犯人を、老齢の検視官・赤城幸造(柄本明)は、遺体や現場の状況から体重100キログラム、握力150キログラム以上で、料理が得意な人物と判断した。だが、事件を担当する捜査一課のエリート刑事・早瀬学(江口洋介)は、犯人像とは似ても似つかない女子大生・柏木千鶴(岡元夕起子)を容疑者と考え、相棒のベテラン刑事・飛鷹健一郎警部(原田芳雄)の反対意見を押し切って捜査を開始した。

千鶴は事件の3日前に美術館に出掛けたまま行方不明となっていたが、脳みそがない状態の遺体となって発見される。猟奇連続殺人事件へと発展した事件を解決すべく、早瀬と飛鷹は、濃紺色の捜査車両である4代目のシビック4ドアセダンを駆り、捜査を進めていく。すると、会社員の若者・木村敦(柏原崇)の犯行による同様の事件に遭遇。2人の刑事は満身創痍(そうい)の状態となりながら木村を追い詰めたが、木村に捜査車両を奪われ、取り逃がしてしまう。

その後、木村の死体が発見され、早瀬は警察病院の女医・笹本美奈(松雪泰子)に疑いの目を向ける。さらに被害者が増える中、早瀬と飛鷹は、新たな捜査車両として5代目シビックのシャンパンカラーのセダン「シビックフェリオ」を手に入れ、捜査を進めていく。一方、早瀬と親しい元キャバクラ嬢・大庭朝子(市川実和子)は、真犯人は人間の脳に寄生して渡り歩く何かであることに気付く。早瀬と飛鷹は事件の真相へと近づいていった。

【解説】

映画「アナザヘヴン」は、飯田譲治と梓河人が角川書店の雑誌に連載したサスペンス・ホラー小説を映画化し、2000年4月に劇場公開した作品。小説は1999年12月に角川ホラー文庫から上・下巻が刊行された。加えて、テレビドラマ「アナザヘヴン〜eclipse〜」も制作されて2000年4~6月にテレビ朝日系列で全11話を放映。テレビドラマの主役は大沢たかおが務めた。また、バンダイ(現・バンダイナムコホールディングス)の携帯型ゲーム機「ワンダースワン」向けのゲーム「アナザヘヴン〜memory of those days〜」も発売するなど、テレビと映画の同時進行を中心とした大掛かりなメディアミックス戦略が注目された。

飯田譲治は、映画監督のほか、脚本家や演出家、小説家として、さまざまなメディアで活躍。テレビドラマの脚本家としては、中村功一のペンネームも用いている。アナザヘヴン公開の2年前の1998年には、ホラー映画「リング」と同時公開したリングの続編「らせん」の監督を務め、原作の小説に忠実な作品を作り上げたことが評価されている。

【車】

ホンダ「シビック4ドアセダン」EF2型(1987年発売)

ホンダは87年9月、コンパクトカー「シビック」シリーズを4代目モデルへとフルモデルチェンジした。通称「ワンダーシビック」の名で大ヒットとなった3代目モデルの販売の勢いを受け継ぐべく、4代目は「グランドシビック」の通称名で、ロー&ワイドのスポーティーなプロポーションを採用。全車に新開発の4輪ダブルウイッシュボーン・サスペンションや、ベーシックエンジンにも高性能な16バルブ機構を導入するなど、新たなメカニズムを数多く搭載した。その後、89年9月には、装備の充実化や高性能でハイパワーな新エンジン搭載車の追加などのマイナーチェンジを行った。

4代目モデルは、3ドアハッチバック、4ドアセダン、5ドアステーションワゴン、5ドアバンの4タイプをそろえた。このうちステーションワゴンは「シビック5ドアシャトル」、5ドアバンは「シビックプロ」の車名を用い、ハッチバックとセダンから1カ月遅れの10月に発売した。シビックシリーズの販売は、ホンダの当時の国内販売3系列のうち「ホンダプリモ」が行った。

映画「アナザヘヴン」で用いられた車両は、モデル末期を迎えた91年1月に発売した4ドアセダンの特別仕様車「35M スーパーエクストラ」の4速オートマチックトランスミッション車。直列4気筒1.5リットルSOHCエンジンを搭載した35Mに、全面ブロンズガラスやメッキモールなどを採用して高級感を高め、AM/FMラジオ付きカセットステレオやマニュアルエアコン、パワーウインドー、電動ドアミラーなど装備を充実させた。劇中では2人の刑事の足となり、ベーシックなSOHCエンジンであることを感じさせない走りの良さを披露した。

【作品データ】

作品名:アナザヘヴン

製作年:2000年

製作国:日本

上映時間:131分

配給:松竹

ジャンル:サスペンス、ホラー、アクション

【スタッフ&キャスト】

監督:飯田譲治

脚本:飯田譲治

原作:飯田譲治、梓河人

主題歌:LUNA SEA「gravity」

出演:江口洋介、市川実和子、原田芳雄、柏原崇、岡元夕紀子、加藤晴彦、松雪泰子、柄本明

(遠藤 幸宏)

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