「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の開催に向けて行われた事業の一つに、東京・渋谷区内17か所の公共トイレを順次整備する渋谷区公共トイレ整備事業「THE TOKYO TOILET」プロジェクトがあった。映画「PERFECT DAYS」は、このプロジェクトの中で誕生した。プロジェクトのメンバーたちは、整備したトイレをきれいに使ってもらいたい。そのためには清掃員の存在を利用者たちに知ってもらうことが必要と考えた。そこでトイレ清掃員を主人公にした映画が製作され、清掃事業者などの使用も多く、機動力が高い軽自動車のキャブオーバーバンであるダイハツ「ハイゼットカーゴ」が主人公の活動を支える相棒として劇中で活躍した。
【ストーリー】
東京・渋谷で公園のトイレの清掃員として働く独り者の中年男・平山(役所広司)は、下町の古い木造アパートに住み、古本屋で買った文庫本の読書や観葉植物の世話、フィルムカメラを使った木漏れ日の撮影などを楽しむ物静かで淡々とした日々を送っていた。
彼は毎朝、同じ時間に目を覚まし、同じように支度をし、同じように青色の軽商用バンのハイゼットカーゴで仕事先の渋谷へと日の出前に出掛け、同じように公衆トイレの清掃の仕事をこなしていく。それは同じことの繰り返しに見えたが、平山にとって同じ日は1日としてなく、新しい1日の訪れと感じていた。
そんな平山の下に、妹ケイコ(麻生祐未)の子どもである、めいのニコ(中野有紗)が押し掛けてくる。
【解説】
平山にとってハイゼットカーゴは、新鮮な1日を感じる大事な空間となっていた。
平山は毎朝、青色のユニフォーム姿でアパートを出ると、駐車場の横にあるドリンクの自動販売機で朝食代わりの甘い缶コーヒーを買い、清掃用具を満載した青色のハイゼットカーゴに乗り込む。
運転席に座った彼は、頭上のオーバーヘッドシェルフに手を伸ばす。そこにはR&Bやロック、パンク、ブルース、フォークなど、若い頃に熱中したさまざまな音楽のカセットテープが収められている。
何本かのカセットテープをつかんで取り出し、少し考えてから1本を選んでカーステレオに半分だけ差し込むと、アクセルを踏む。車が路地を出て大通りに入ると、彼はカセットテープを押し込み、車の流れとともに音楽が流れはじめた。車は首都高速道路に入り、やがて日が昇り始める。朝日に照らされた街は生気に溢れていき、ハンドルを握る平山の頭はリズムに合わせて左右に揺れ、口元は緩み、移動時間は新しい1日の楽しい小旅行に変わった。
主演の役所広司は、2023年の第76回カンヌ国際映画祭で日本人俳優として19年ぶり2人目となる最優秀男優賞を受賞した。
【車】
ダイハツ「ハイゼットカーゴ」KF型(2007年発売)
劇中で使用されたダイハツ工業の「ハイゼットカーゴ」は、10代目ハイゼットシリーズを07年12月に一部改良したモデル。10代目は04年12月に全面改良して発売した。
一部改良では、全車に新しいツインカムエンジンを搭載したほか、フロントバンパーの変更や内装の意匠変更および装備の充実化などを実施。また、上位グレードに標準装備のカーステレオは、カセットプレーヤー付きからCDプレーヤー付きへと切り替わった。
劇中車は、標準装備の設定がなくなったカセットプレーヤー付きのカーステレオを装着することで、平山のカセットテープのコレクションに対するこだわりを表し、毎日の小旅行を支える空間を作り出した。
【作品データ】
作品名:PERFECT DAYS(パーフェクトデイズ)
製作年:2023年
製作国:日本、ドイツ
上映時間:124分
配給:ビターズ・エンド
ジャンル:ドラマ
【スタッフ&キャスト】
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
(遠藤 幸宏)



















