アマチュア・オーケストラは、国内に約2000団体あるという。映画「リトル・マエストラ」の制作当時、参加人口は高齢化の進展とともに、中高年が中心となって増えていた。アマチュア・オーケストラが地域の活性化に欠かせない存在となったケースもある。一方で、人口減少と少子高齢化の影響により団員をそろえることが難しくなるだけではなく、地方財政がひっ迫して自治体からの支援が縮小し、運営が厳しくなったアマチュア・オーケストラもあった。このような環境の中で同映画は、過疎化が進む田舎で解散の危機に直面したアマチュア・オーケストラの団員たちと救世主となる少女とのやりとりを描いた物語。その少女の登場や、自分たちが望む演奏の場へと向かう場面に、小型トラックの三菱ふそう「キャンター4WD」を登場させることで、それぞれのシーンを盛り上げた。
【ストーリー】
日本海に面した石川県志賀町福良で活動するアマチュア・オーケストラは、団員こそ少ないものの、若者から高齢者まで幅広い年代層が集い、コンクールでの優勝を口にしながらも自由に音楽を楽しんでいた。そのコンクールに出場しようとした矢先、老指揮者が亡くなり、町は指揮者不在を理由に資金援助を止めることを決めた。東京の音楽大学を卒業してオーケストラのまとめ役となっていた第一バイオリンの三村みどり(釈由美子)は、老指揮者が生前話していた孫娘の天才指揮者・吉川美咲(有村架純)のことを思い出し、団員たちは美咲をコンクール出場の指揮者として迎えることにした。
冬の季節を迎えた空港に現れた美咲は、老指揮者の話と違い、派手な服を着た茶色の髪のヤンキー娘で、高校のブラスバンド部で指揮者をしていた。みどりと美咲は空港からのバスに乗り遅れ、みどりは福良を出て金沢市に住む引っ越し業者の荒沢勝(松本利夫)に福良まで送ってもらうことを頼む。勝は引っ越しの荷物を運び出したばかりの三菱ふそう「キャンター4WD」で2人を送ることにしたが、美咲はキャビンの席に座らず、広い荷室の中で過ごすことを選んだ。福良までの途中、落石除去のため一時通行止めとなった道で時間をつぶしている間、みどりは美咲にことの成り行きを話す。みどりは老指揮者の話の大半が作り話であったことを知り愕然(がくぜん)とするが、美咲はバイト代のためにと引き受け、スーパーマーケットに立ち寄ることを求めた。
キャンター4WDが福良に到着し、荷室の扉が開く。みどりは団員たちが美咲の姿を見てがっかりすると思っていたが、そこに現れたのは、黒髪で高校の制服を着た清楚な姿の女子高生だった。バンボディーの箱の中で変身した美咲は、やがて、それぞれの問題を抱えた団員たちと向き合いながらオーケストラの再生に向けた救世主として奔走し、同時に本来の自信を取り戻していく。
【解説】
リトル・マエストラの主な舞台となったのは、能登半島中央部の西側に位置する石川県志賀(しか)町福浦(ふくら)。漁業で栄えた歴史のある風光明媚(めいび)な港町だが、漁獲量が減り、人口も減少して過疎化が進んでいた。劇中のアマチュア・オーケストラ「福浦漁火オーケストラ」は数十年の歴史を持ち、かつて栄華を極めた漁業会社の社長が、クラシック音楽が好きで設立した。その活動拠点は漁協の漁具倉庫。また、バイオリンの個人練習をする場面は、観光名所でもあり現存する日本最古の木造灯台である旧福浦灯台で行うなど、ロケ地巡礼の観光客を誘致する作品ともなっている。
監督を務めた雑賀俊朗は、テレビドラマのディレクターや映画監督として活躍。リトル・マエストラは、上海国際映画祭2013「日本映画週間」の招待作品に選ばれた。
また、リトル・マエストラの制作にプロの室内管弦楽団であるオーケストラ・アンサンブル金沢が協力し、石川県内の他の楽団や多くのアマチュア音楽家なども撮影に参加したとされ、音楽映画としての完成度も高めた。さらに当時、オーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督であった井上道義が、物語の中で亡くなった老指揮者の師匠役として登場するなど、同県の音楽界を挙げて地域やアマチュア・オーケストラを応援する映画作品に仕上げた。
【車】
三菱ふそう「キャンター4WD」FG83型(7代目、2002年発売)
三菱自動車は、02年にキャブオーバー型の小型・中型トラックである三菱ふそう「キャンター」を全面改良し、7代目モデルとして6月に2WD車、7月に4WD車を発売した。キャンターは同社の貨物車の主力車種であったが、トラック・バス事業部門は00年4月に社内分社化されて三菱ふそうトラック・バスカンパニーとなり、03年1月には同部門を分社化して三菱ふそうトラック・バス株式会社を設立した。この状況下で7代目キャンターは、グローバルモデルとしての商品力を高めて発売した。
7代目キャンターは、「GLOBAL FIT(グローバル・フィット)」をコンセプトに開発。国内だけでなく海外で活躍する商品としての価値を高めるために、世界基準のパフォーマンスを追求した。環境性能については、国土交通省が02~04年にかけてディーゼル車のNOx(窒素酸化物)、PM(粒子状物質)などの排出基準を強化した「新短期規制」に対応。安全性能では、ABSやエアバッグなどの標準装備化を進めた。さらに、オートマチック車のラインアップも充実させるなど、環境・安全性能を高めるとともに使いやすさも向上し、海外市場での販売増を狙った。
劇中で使用された車両は、荷台に箱型の荷室を備えたバンボディー型の4WD車。小回りが利き、荷物が風雨の影響を受けにくい、積雪路の走行性能が高いことなどから、降雪地などでの小口配送や引っ越しなどの業務用に多く導入された。
【作品データ】
作品名:リトル・マエストラ
製作年:2013年
製作国:日本
上映時間:108分
配給:アルゴ・ピクチャーズ
ジャンル:ヒューマンドラマ
【スタッフ&キャスト】
監督:雑賀俊朗
出演:有村架純、釈由美子、蟹江敬三、篠井英介、筒井真理子、上遠野太洸、松本利夫、前田吟、小倉久寛、井上道義
(遠藤 幸宏)

















