自動車部品向けの複合樹脂材料として期待される「セルロースナノファイバー(CNF)」

 富士キメラ総研(田中一志社長、東京都中央区)は2023年「微粉体市場の現状と将来展望」をまとめた。微粉体の世界市場は23年に前年比12・5%増の12兆8162億円、27年には15兆3568億円に拡大すると予測した。電気自動車(EV)用部品や3D(三次元)プリンター材料を中心に高成長が期待できるという。

 汎用無機8品目、金属7品目、金属酸化物3品目、セラミックス6品目、ポリマー11品目、カーボン3品目及び、同社が注目する微粉体5品目を対象に調査した。

 微粉体市場のうち最も市場規模が大きいのはポリマーで、23年には同13・2%増の4兆1830億円、27年には5兆733億円に成長する予想だ。足元では食品添加物や錠剤の賦形(ふけい)剤で使用されるセルロース系パウダーが市場をけん引しているが、今後は、3Dプリンターの成形材料であるポリアミドや、自動車部品向けの複合樹脂材料で採用が期待されている「セルロースナノファイバー(CNF)」などの需要が大きく伸びる可能性があるという。

 ポリマーに次ぐ市場規模を持つカーボンも需要が底堅い。23年の世界市場は同13・8%増の3兆9470億円で、27年には4兆9076億円になる見通し。タイヤ向けのカーボンブラックが市場をけん引しており、世界的な自動車生産の回復で安定成長が見込まれる。また、リチウムイオン電池向けの導電助剤で需要が増えているカーボンナノチューブや、有機薄膜太陽電池向けのフラーレンについても、市場の成長を後押しするとみられる。

 富士キメラ総研は、注目微粉体に3Dプリンター用の金属パウダーと樹脂パウダー、化粧品用マイクロビーズ代替パウダー、中空微粒子、金属有機構造体(MOF)を挙げた。

 自動車関連では3Dプリンター用パウダーが注目される。金属パウダーは航空宇宙分野での利用が欧米で進む。また、一部の欧州自動車メーカーでは自動車部品の製造にも用いる。金属パウダーの世界市場は23年に同14・0%増の2049億円、27年には4057億円へと拡大する予測だ。

 樹脂パウダーは、23年時点で航空宇宙や自動車、医療分野の最終製品の製造で採用実績がある。特に、米国やドイツが政府主導で普及を進めているという。3Dプリンター用樹脂パウダーの世界市場は23年に同34・0%増の603億円、27年には1342億円に拡大する見通しだ。