適切なタイヤ脱着作業や増し締めなどの実施を求める

 後を絶たない大型車の車輪脱落事故を防ぐため、国土交通省は、事業用車両の管理を担う「整備管理者」にタイヤ脱着作業や増し締めなどの実施を求める。整備管理者向けの研修に脱落事故防止対策も追加する。整備管理者制度の運用通達を改め、10月1日から施行する考えだ。これにより、不適切なタイヤ脱着作業や保守で車輪脱落事故を起こした運送事業者や整備管理者は行政処分の対象となる。

 大型車の車輪脱落事故防止対策の調査・分析検討会が昨年12月に公表した「中間取りまとめ」で、速やかに実施すべき対策の一つとして「整備管理者権限の明確化や整備管理者に対する指導強化」が提言されていた。これを受けて「道路運送車両法の一部を改正する法律などの施行に伴う整備管理者制度の運用について」(2003年自動車交通局長通達)などを改正する。

 車両総重量(GVW)8㌧以上または定員30人以上の大型車を保有する場合、整備管理者の役割として①タイヤ脱着作業や増し締めなどの保守管理を実施または整備工場に実施させること②点検記録簿、タイヤ脱着時の作業管理表などを管理すること―を整備管理者制度運用通達に明記する。整備管理者の管理権限を定めた整備管理規定に、タイヤ交換などの自家整備作業要領を具体的に記載する。

 整備管理者の選任前・選任後研修では、大型車の車輪脱落事故の事例と防止対策を徹底することの重要性を学ぶカリキュラムも追加する。

 不適正なタイヤの脱着やホイールボルト・ナットの保守管理を怠ったことで車輪脱落事故を起こした運送事業者に対しては、道路運送車両法に基づく行政処分を行う。初違反は20日車、再違反は40日車の車両使用停止とする。また、3年以内に事故を2回起こした運送事業者の整備管理者に対しては同省が解任命令を出す。

 国交省によると、大型車の車輪脱落事故発生件数は、11年度以降、増加傾向にあり、20年度は過去最多の131件にのぼった。21年度は前年度比8件減の123件だったが、人身事故を伴う大型車の車輪脱落事故が5件起きた。

 中間取りまとめでは、21年度に発生した大型車の車輪脱落事故の特徴として「タイヤ脱着作業後、1カ月以内に約63%の車輪脱落事故が集中」「直近のタイヤ脱着作業後の増し締めを実施していない車両が67%あった」ことなどを指摘した。初度登録年から4年を経過すると車輪脱落事故が急増する傾向も判明している。