自動車販売店という門をたたいた皆さんは、日々、どのような思いで仕事に向き合っているでしょうか。毎月の販売目標、新商品の勉強、メンテナンスの受け付け、そして時には厳しい指摘への対応。目まぐるしい毎日を送る中で、「自分の数字を上げるため」「上司に怒られないように」といったことに精いっぱいになってはいませんか。もし、仕事で息苦しさを感じているのであれば、一度この言葉を思い出してみて下さい。
「働く」の語源は、「傍(はた)を楽(らく)にする」ことだという説があります。「傍」というのは、あなたの隣にいる人。つまり、お客さまであり、共に働く職場の仲間のことです。その人たちの負担を軽くし、心を楽にすることこそが、働く本質であるという考え方です。
クルマは人生で2番目に高い買い物と言われています。お客さまがショールームに来店されるとき、その胸の内には「ワクワク」と同じ、あるいはそれ以上の「不安」が詰まっています。「維持費を払っていけるだろうか」「この装備は本当に必要だろうか」といった不安でいっぱいです。
ここでプロは、ただカタログの数字を並べることはしません。お客さまが抱えている不安という重荷を、自分の知識と誠実さで取り除いてあげるのです。抱えている不安を「楽」にしてあげて「この人に任せておけば間違いない」という安心感を提供することがプロの仕事になります。
また、仕事は一人では完結しません。セールスパーソン、サービススタッフ、事務、受け付け。多くの歯車がかみ合って、初めて1台のクルマがお客さまの下へ届きます。ここで、自分の仕事だけ終わればいいと考えるのではなく、どうすれば次の担当者が動きやすくなるかを想像してみて下さい。サービススタッフに渡す指示書を、現場が一目で理解できるように整理して書く。受け付けスタッフが困らないよう、お客さまの特徴を事前に共有しておく。このような小さな気配りは必ずチームに伝染します。あなたが周囲を「楽」にすれば、巡り巡ってあなた自身の仕事もスムーズで成果の出しやすい環境へと変わっていきます。
あなたの給料を払ってくれているのは紛れもなくお客さまです。上司への体裁を整える時間があるのならば、1通でも多くお客さまへお礼状を書く。納車後のお客さまに1本の電話を入れる。その利他の積み重ねが、やがて紹介やリピートという揺るぎない信頼として返ってきます。
「傍を楽にする」―。これは自己犠牲ではありません。誰かの不便を解消し、不安を安心に変えた分だけ、相手から「ありがとう」という言葉や、あなた自身の価値として蓄積されていきます。
クルマを売るだけの人で終わるのか、人生のパートナーとなるのか。その違いは、きょうあなたが交わす一言の中に、どれだけ「傍にいる人を楽にしたか」という思いが込められているかにかかっています。今日から、あなたの働くを再定義してみてはいかがでしょうか。
文:株式会社プログレス 江原忠宏
〈プロフィル〉えはら・ただひろ 2006年東海大学電子情報学部卒、同年国産ディーラー入社。営業職、店長を務めるも、17年5月輸入車ディーラーに転職。入社2年目に係長昇進、3年連続で販売優秀者表彰。その後人材育成にやりがいを見出し、20年プログレス入社。「人材を『人財』に」をテーマに活動中。静岡県出身、42歳。



















