存続の危機に陥ったドリフトレースのチームを、実車は初めてというeモータースポーツ日本一の若者がハンドルを握って救う。2022年に劇場公開された映画「ALIVEHOON アライブフーン」は、日本発祥のドリフトレースを題材に、日本のトップドライバーたちが集まり、日本国内で、日本人スタッフにより製作された。
日本の文化を題材とした映画を日本人が製作して世に送り出すことは数多く、当たり前のことと言える。だが、車文化の一つであるモータースポーツを題材に、日本で製作・劇場公開された作品は稀だ。また、eモータースポーツの普及拡大を背景に、実車のレースで活躍するeモータースポーツ出身者が国内外に現れている。そうした時代の流れも取り入れて製作されたこともあり、モータースポーツの映画として日本の映画史に残る作品となった。
【ストーリー】
自動車リサイクル工場に住み込みで働く若者・大羽紘一(野村周平)は、内向的で人付き合いが苦手な性格だったが、eモータースポーツの世界では日本人トップのドライバーとなっていた。一方、ドリフトレースの世界では、最年長ドライバーの武藤亮介(陣内孝則)が率いるチームアライブが、成績不振と武藤の怪我により解散の危機に陥り、新たなドライバーを探していた。
ある日、紘一のもとに武藤の娘でアライブの若いメカニックである武藤夏実(吉川愛)が訪れ、紘一をチームに誘う。工場の社長である檜山三郎(モロ師岡)が、苦手とする人付き合いを紘一に克服させるため、亮介に話をしたことがきっかけだった。夏実は改造したトヨタ「チェイサー」で紘一の腕を試し、実車でのスポーツ走行は初めてという腕前に驚いた。
夏実が紘一をチームの拠点である自動車整備工場・武藤商会に連れて帰ると、亮介が貴公子と呼ばれる若手トップのドリフトレーサー・柴崎快(福山翔大)とチームへの加入話を進めていた。だが、金銭を求める快を夏実は追い出す。亮介はゲーマーでリアルのレースの実戦経験がない紘一の加入に反対したが、伝説のチューナーとして知られるチームメカニックの葛西隆司(本田博太郎)が興味を持ったことで、走行テストを行うことにした。そのテストに亮介は、ドリフトレースで3年連続日本一となった絶対王者・小林総一郎(青柳翔)を呼び、紘一にトップドライバーの腕を見せつけようとした。だが、亮介も総一郎も紘一の走りに惚れ込んだ。やがてチームアライブは、日産「シルビア」をベースとした競技車両を完成させ、紘一は実車でのレースに参戦し、総一郎や快との戦いに挑んでいく。
【解説】
アライブフーンの製作は、「ドリキン(ドリフトキング)」と呼ばれた元レーサーの土屋圭市が、日本の地で日本発祥の「ドリフトレース」の映画を製作したいとの思いから始まり、映画やミュージックビデオなどの監督として実績を持つ下山天が、その思いを実現させた。撮影は、国内外のモータースポーツファンから「ドリフトの聖地」と称される福島県二本松市の「エビスサーキット」を中心に行われ、ストーリーに必要なロケーションが同県内で全て揃ったことから、撮影の全てが同県内で行われた。主人公の紘一がドリフトレースのチームに加入して始めたトレーニングのシーンは、同県福島市の「あづま総合運動公園」のイチョウ並木、ドリフトレースのチーム監督・武藤亮介が公道で紘一の走りを鍛えるシーンは福島県只見町と新潟県魚沼市を結ぶ国道252号の冬季閉鎖区間で撮影された。
物語の中で実車の走行シーンでは、トップクラスのレーシングドライバーがハンドルを握って俳優たちの代役を務めた。紘一の代役は中村直樹、ドリフトレースの絶対王者である総一郎の代役は横井昌志、若手ドライバーである貴公子・快の代役は北岡裕輔が務め、ヒロインでメカニックの夏実のドリフト走行は久保川澄花が指導した。さらに、土屋が作品の監修を務めるとともに、レースの実況中継の解説者としても登場。ストーリー中のeモータースポーツの監修は、世界トップクラスのeモータースポーツドライバー・山中智瑛が務めた。
【車】
日産「シルビア」S15型(1999年発売)
シルビアは、日産自動車が1965年から2002年にかけて発売した後輪駆動(FR)方式の2ドアスペシャリティークーペ。初代(CSP311型)は1965年4月に発売され、その後、88年発売の5代目(S13型)以降はモータースポーツのベース車として人気となった。アライブフーンの主人公が駆る競技車両のシルビアは、99年発売の7代目(S15型)。前モデルの6代目(S14型)がボディーサイズを3ナンバー化して不評だったことから、5ナンバーサイズへと戻し、軽量・コンパクトなスポーティークーペとして発売した。
グレードは、排気量2リットルの直列4気筒ツインカムエンジン搭載の「スペックS」と、同じく2リットルのインタークーラーターボエンジンを搭載した「スペックR」。撮影に使用された主人公のシルビアのエンジンは、トヨタ「アリスト」や2代目のトヨタ「スープラ」に搭載された3リットル直列6気筒ツインターボエンジンの「2JZ」エンジンに換装されたとされる。劇中では、オリジナルの車とエンジンは異なるものの、ボディーのバランスの良さを生かしたドリフト走行を披露した。
【作品データ】
作品名:ALIVEHOON アライブフーン
製作年:2022年
製作国:日本
上映時間:120分
配給:イオンエンターテイメント(日本)、
ジャンル:モータースポーツ、青春
【スタッフ&キャスト】
監督:下山天
脚本:作道雄、高明
エグゼクティブプロデューサー:影山龍司
企画原案:影山龍司
監修:土屋圭市
プロデューサー:瀬木直貴、沢井正樹
撮影監督:清川耕史
編集:下山天
音楽:吉川清之
主題歌:NOISEMAKER「Hunter or Prey」
後援:福島県、福島市、日本自動車連盟
出演:野村周平、吉川愛、陣内孝則、本田博太郎、青柳翔、福山翔大、モロ師岡、土屋アンナ、織戸学、土屋圭市
(遠藤 幸宏)



















