テスラ「サイバートラック」の生産ライン
BYD「アット3」

 電気自動車(EV)大手の米テスラ、中国・比亜迪汽車(BYD)が発表した2025年1~3月期(Q1)の世界新車販売台数は、テスラが2桁落ち込み減少基調が鮮明になった一方、BYDが6割近く増加し好調だった。テスラは「サイバートラック」のリコールが複数生じたことや、経営トップのイーロン・マスク氏の政治的な発言により世界的なユーザー離れが生じ失速。これに対しBYDは、地元中国や東南アジア向けなどの販売・輸出拡大で大幅な伸びを持続した。

 四半期ベースで増減率を見ると、テスラの販売は24年Q1に減少に転じ、同4~6月期(Q2)もマイナス。同7~9月期(Q3)、同10~12月期(Q4)こそ1桁台のプラスに回復したものの、25年Q1には再びマイナスとなり、減少基調が示された。

 同社のラインアップで最も新しいサイバートラックのリコールが頻発しユーザー印象が悪化するとともに、欧米で〝EVブーム〟が落ち着いたことでも販売の勢いが衰えた。

 同社は上級モデル「モデルS/X」の販売を日本で取りやめるなど、生産車種の絞り込みに着手したことにも苦境が垣間見られる。ただ、25年以降には新型プラットフォームを採用した廉価車や〝ロボットタクシー〟の投入を計画している。マスク氏の発言に端を発したイメージダウンの回復と合わせて、巻き返しが注目される。

 BYDの販売は、25年Q1に3四半期連続の100万台超えとなり好調が続いた。23年Q1との比較ではほぼ2倍の台数となっており、その勢いがうかがえる。

 25年Q1の販売内容を見ると、対前年同期比の伸び率がプラグインハイブリッド車(PHV)では7割を超え、EVは4割近くとなった。同社はPHVの伸びが目立つが、EVでも競合を上回る増加率・台数を確保しており、そこに電動車分野での強みが、改めて示された。

 BYDは東南アジアに続き、欧州への本格進出に向けて現地生産の準備を進めている。欧州生産で先行したテスラが失速する中、電動車によって世界攻略を進めるBYDの勢いが今後も続くのか、実力が試される。