―新型車の開発で苦労した部分は
「『ジムニー』はコンパクトで本格的な四輪駆動車というのが商品価値だ。これを守りつつ、ノマドは後席の使い勝手を良くすることと、荷室スペースを広くとらなければならなかった。(ベースモデルがあるため)後席の使い勝手を良くするのにできることは長さだけで、ホイールベースをどのくらいにするかが肝だった。とにかく詰めたいが、詰めてしまうと、後席の乗降性が悪くなる。最適な長さを実現するため、ホイールベースを伸ばしたり、縮めたりした簡易的なモデルを作って乗降性を確認したが、これが一番苦労した。結果的に(シエラに比べ)プラス340㍉㍍に抑えられた。デザイン担当者も頑張ってくれたおかげで、見た目での間延び感のない、良いモデルに仕上がった」
―ホイールベースを伸ばした影響で重量が増えた
「重量はシエラに比べ100㌔㌘重いが、開発段階ではとにかく減らさないといけなかった。3ドアをベースに車体を伸ばしているが、ただ伸ばしただけだと車両剛性にも影響し、車がよじれてヤワな車になってしまう。このため、センターフレ―ムの追加や、シャシーフレームの見えない部分に補強材を採用した。結果的に重量は増えたが部品点数を最適化して(重量増を)最小限に抑えた。燃費の悪化防止にもつなげた」
―ファミリー層を開拓するための取り組みは
「後席乗降性や乗り心地を良くしたことだ。シエラに比べて足回りのセッティングやシートクッションに厚みを持たせた。乗員の乗り心地にも影響する操縦安定性にもこだわった。(ドライバーが)全体的にゆったり運転できるセッティングにしている。後席乗員もドライバーの操作に対して、ゆったりした動きになるので、快適に乗ってもらえる」
―母国である日本市場にインド製モデルを相次いで投入している
「インドでの品質などの生産レベルが急に上がったわけではない。2016年に日本市場に投入したインド製の『バレーノ』以降、地道に積み上げてきた。『フロンクス』でこれまでの活動がうまくいったことを踏まえ、ノマドも品質に自信を持って(日本に)投入できると感じた。日本人、インド人はそれぞれ気付く点が異なる。この相乗効果もあって品質も上がっている」
―日本専用の機能は
「基本的にはグローバルでジムニー5ドアと同じ仕様だが、日本仕様は『ノマド』の名称とエンブレムを装着している。安全機能では、誤発進抑制機能などの先進運転支援システム(ADAS)などを装備する」
(藤原 稔里)