ホンダを主要納入先とするサプライヤー10社の2021年3月期連結業績は、5社が営業増益となった。コロナ禍の影響で厳しい立ち上がりとなったものの、ホンダの中国事業が好調だったことや、コスト削減効果が期前半の落ち込みをカバーした。中国以外でも回復が見込まれる今期業績見通しは、半導体不足などの懸念材料があるものの、6社が営業増益、1社が営業黒字への転換を見込む。ただ、ホンダが40年に内燃機関車からの撤退を表明した中、電動化への備えや、事業活動での二酸化炭素(CO2)排出量削減などの負担を迫られる。

 ホンダの21年3月期連結業績は、売上高がコロナ禍の影響から前年同期比11・8%減と減収だった。7~9月期以降、想定を上回る回復となったものの、通期で4~6月期のマイナスをカバーできなかった米国と日本の四輪車販売がそれぞれ約1割減少した。

 こうした中、サプライヤーの業績を支えたのが中国だ。ホンダの中国の四輪車販売台数は同24・6%増と大きく伸びた。10社のうち、唯一増収増益だった八千代工業は、中国の燃料タンク生産台数が前期と比べて3割以上増加し、サンルーフの売り上げが同25・4%増と伸びた。同社の加藤憲嗣社長は結果的に「通期の計画を2割上回った」としている。

 コロナ禍の中、5社が営業増益となったのは、4~6月期の業績悪化を受けて緊急事態の対策として進めたコストや固定費を削減する取り組みが効いたためだ。エイチワンは中国を除く全地域で固定費を10%抑制した。武蔵精密工業はコロナ禍に起因する約23億円の収益でのマイナスのインパクトを、コストダウンなどの21億円と減価償却費を14億円削減した増益要因で相殺した。

 今期の見通しは、中国に加え北米や、アジア地域で新車需要が回復し、サプライヤー各社の生産量も増加する見通し。ホンダの今期の四輪車販売計画は同10%増の500万台。強気の計画を織り込んでサプライヤー6社が増収を予想する。

 ただ、昨年末から顕在化している半導体不足の影響が各社の業績の不安定要因となっている。業績予想を「未定」としたテイ・エス テックの保田真成社長は「(今期業績予想について)ハッピーな発表ができると思っていたのに残念だ」と苦笑する。半導体不足の影響で自動車生産が不安定なため、エフテックも今期の業績予想の発表を見送った。

 ホンダは半導体不足で一部工場の稼働を停止して減産するものの、後半に挽回して通期での影響をゼロに抑える計画。ジーテクトの吉沢勲取締役は、ホンダの方針を踏まえ、「後半にかけて挽回していく見通し」とする。

 一方、前期は緊急事態で不要不急な投資を先送りしてきたことから、今期はその反動もあって将来を見据えた投資を拡大する。エフ・シー・シーの設備投資計画は同99・2%増の125億7千万円で、エイチワンも同57・0%増の191億7千万円に増やす方針。武蔵精密工業は研究開発費を同24・1%増の54億円に引き上げる計画だ。

 ホンダは40年に新車販売のすべてを電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)にする計画を打ち出した。内燃機関系を中心にEVやFCVでは使われなくなる部品がある。燃料タンクを手がける八千代工業の加藤社長は「ホンダの電動化はすでに織り込んでいること」と冷静で、新規事業創出などを急ぐ。ホンダが打ち出した将来のゼロエミッション化宣言にサプライヤー各社も対応を迫られる。