工業製品は、設計段階や製造時にしっかりと管理していても、使用過程で不具合など品質や機能に問題が発生する可能性があります。特に自動車ではひとたび不具合が生じれば、乗員をはじめ、周囲の人々や車も危険に巻き込みかねません。こうした事態を未然に防ぐために存在するのが「リコール(回収・無償修理)」制度です。

 自動車メーカーが自らの判断で国土交通省に事前に届け出し、必要な措置を行うことで車の安全性や信頼性を担保します。ユーザー一人ひとりの命や財産を守る上で、極めて重要な制度となっています。

 日本のリコール制度は1969年に運輸省(現国交省)の省令の一部を改正してスタートし、95年には道路運送車両法に規定されました。対象は完成車だけでなく、タイヤやチャイルドシートといった安全にかかわる部用品も含まれます。同法で定める保安基準を満たさなくなる恐れがある場合はリコールを届け出ますが、保安基準には規定されていなくても安全上看過できないものについては「改善対策」として措置します。双方の基準に達しないものはメーカーが「サービスキャンペーン」として対策を実施します。メーカーはユーザーに対してリコールを通知しますが、ユーザーにも自分の自動車を保安基準に適合するよう点検・整備する義務があり、知らせを受け取ったユーザーは適切な修理を受ける必要が生じます。

 リコール台数は増加傾向にあります。2019年度のリコール台数は前年度比28.2%増の1053万4494台となり、3年ぶりに1千万台を超えました。全世界で大きな品質問題となったタカタ製エアバッグが一因です。しかし、タカタ関連を除いた台数も974万1698台で3年ぶりに過去最多を更新しています。一部メーカーで起こった不適切な完成検査による大規模リコールも台数を押し上げた格好です。また、そもそも近年の車づくりが効率化のために複数モデルで部品共通化の範囲を広げていることもリコール台数が増加しやすい要因になっています。