日産の新型エルグランド、成功の鍵は「再販価値」 戦略的な残価率設定の可能性も 商品力強化も追い風に

  • 自動車メーカー, 自動車流通・新車ディーラー
  • 2026年5月20日 05:00

日産自動車が今夏、16年ぶりに全面改良する上級ミニバン「エルグランド」が、国内販売で成功するには再販価値が鍵を握りそうだ。競合車のトヨタ自動車の「アルファード/ヴェルファイア」は、ハイブリッド車(HV)の場合3年で約70%の残価を見越した金融商品がある。一方、エルグランドは10ポイント以上も差をつけられているのが実情だ。幅広い顧客に提案するには、買いやすい残価型のクレジットが欠かせない。高い残価率を維持していけるのかが、新型の課題になっている。

現行型アルファード/ヴェルファイアは全面改良から約3年が経過したが、新車、中古車ともに高い人気となっている。残価保証型の金融商品でHVを購入する場合の残価率は3年で約70%、5年で約55%、7年で30%ほどになっていることが多い。先代から価格は上昇したが、高い残価率を背景に月額の支払いを抑えて車を手にした顧客も少なくない。

これを追い掛けるエルグランドだが、日産の日本マーケティング部の柴田亮チーフマーケティングマネージャーは、「現行型エルグランドとの残価率は、10ポイントほどの差がある」との認識を打ち明ける。ただ、市場ではもっと厳しめに見るところもあり、20ポイントほど低めに設定するケースもあるようだ。日産は、新型を競争力のある価格にする考えを示している。しかし、残価率が低いままでは月々の支払い額が高くなり、残価設定型ローンを使用するユーザーへの提案力が弱まる懸念がある。

残価率を高めるには認定中古車の販売を強化するなどして中古車相場を底上げする必要があるものの、何よりモデルやメーカーのブランド力を高めることが重要だ。ただ、エルグランドのモデルサイクルが長期化したほか、日産自体も経営問題が続いたこともあり、トヨタ車と比べると相場が低いモデルが多い。これをてこ入れするには、時間がかかる。

新型車を投入する際、メーカーや販売店が戦略的に高い残価率を設定する手法もある。残価保証型ローンの満期時に、車両の価値が残価率を下回れば損が出るリスクはあるが、新車の販売促進につなげやすい。強気な残価に見合う形で中古車の需要も高められれば、中長期的には相場を上向かせられる可能性もある。実際、日産は「セレナ」や「リーフ」でこうした手法を採用している。エルグランドでも同様の戦略を描くことは、十分に考えられる。

今でこそ、ライバルと差が開いたエルグランドだが、1997年に初代を発売した当初は先行していた。2代目に切り替わる2002年までの約6年間、コンスタントに年間4万台前後を販売し、トヨタ勢を抑えてきた。トヨタも同年、初代アルファードを発売して巻き返したが、エルグランドも年3~4万台を維持し、一定のシェアを確保してきた。

勝ち負けが明確になったのは、10年に全面改良した現行モデルからだ。当初は2万台前後を販売していたものの、海外市場を重視していた当時の商品戦略の弊害で、国内専用車のエルグランドは抜本的な改良が施されなかった。この間もアルファード/ヴェルファイアは商品力を磨いたことで、事実上の競合不在の中、合計で年間10万台を超えるモデルに成長した。

日産は、満を持して開発した4代目でシェアを奪い返す考え。第3世代のシリーズハイブリッドシステムや、高性能遮音ガラスを採用するなどし、エンジンの振動や風切り音を低減。競合車よりも出力が高いリアモーターを搭載し、深い雪や氷雪路面での走行安定性も高めた。柴田氏は「これまでも、新型もメインカスタマーが一番求めるのは乗り心地や静粛性だ」とし、上級ミニバンとしての仕上がりに自信をみせる。

30年度までに、国内販売を現在の40万台から55万台に増やす目標を掲げる日産。この目標を達成するためにも旗艦モデルのエルグランドは、重要な役割を担うのは間違いない。進化した商品力を生かし、どれだけボリュームを稼げるのか。日産の販売戦略に注目が集まっている。

(水鳥 友哉)

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