ホンダが国内事業の強化に向け、今後3年以内に上級ミニバンなど売れ筋のセグメントに新型車を集中的に投入する。新車の開発には、最前線で顧客と接している販売会社の意見を広く取り入れる方針だ。電気自動車(EV)への過剰投資や、中国市場の販売不振などで業績が悪化しているホンダ。販社と一体で国内戦略を立て直すことで、再成長を目指している。
4月9、10日。東京都港区のホテルに、一部のホンダ販社の経営者が集められた。そこで行われたのは、「販売網成長戦略会議」。直近の経営状況やホンダが進める販社支援策の進捗(しんちょく)、中期的な商品計画の構想などが主な内容だ。その中で、国内営業トップの川坂英生氏ら幹部は、「これから販売店の意見をもっと聴いていく」と強調した。
言葉の裏には、過去の反省がある。直近の約10年間、ホンダの国内戦略は販社にとって厳しい内容のものが多かった。四輪事業の収益改善に向け、2017年には当時掲げていた「年間販売100万台」の目標を取り下げた。
さらに、狭山工場(埼玉県狭山市)の閉鎖を含む大幅な国内生産の縮小を発表。それに伴って販売車種の絞り込みも行った結果、同年に72万6796台あった国内販売台数が、25年には61万1271台まで落ち込むなど市場での存在感が低下していった。
これを表すかのように、もともと本部格だった国内事業を23年に現在の「統合地域本部」に集約。本社と最も距離が近いはずの国内販社との距離感が広がった。ある販社のトップは、「昔はメーカーの社長が視察に来ることも珍しくなかったが、今はそうしたことが全くなくなった」と、今の関係性を示す。
販社と隔たりが大きくなったことで、ホンダにとって、さらなる誤算が生じた。ホンダ車の商品構成に隙が生じたことで、販社の努力だけではボリュームを増やすのが難しくなった。もともと、100万台の旗を降ろし、「70万台の安定販売」で国内の販売網や生産拠点を維持するはずだった。しかし、18年を最後にこの水準には届いていない。現在の60万台超の水準が続けば、国内事業の土台を揺るがしかねない懸念も出ていた。
この間、国内販売を支えてきた軽自動車「N-BOX(エヌボックス)」も「競合車の競争力が上がり、簡単には売れなくなってきた」と、関東の販社首脳と語る。商品力を補おうと海外生産車を増やしているが、「日本で売りやすいモデルが少ない」と指摘するトップもいる。国内販売の立て直しは、急務となっていた。
国内重視の方向に変化が表れたのは、経営資源を振り向けてきた米国や中国の市場環境が悪化したことも大きい。相対的に国内市場の重要度が高まっており、早急に結果を出すには市場のニーズを最も知る販社の意見を集約するのが近道と判断した。
販社の声を商品開発や販売施策の策定に生かす具体的な取り組みの一つが、28年をめどに全面改良する次期型「フィット」だ。従来も開発中の商品の情報を販売店に共有し、意見を聴くことはあったが、開発の終盤になることが多く、実際に意見が反映されることは少なかった。次期型では歴代モデルを数多く販売してきたスタッフの意見を、早い段階から取り入れていくとみられる。
ホンダは今後、販社の要望が大きい上級ミニバンやAセグメント車などを発売していく考え。これらのカテゴリーで先行する競合勢に追い付けるのか、ホンダの地力が試されている。
(水鳥 友哉)



















