12年ぶりに増加した400万円未満のエントリー輸入車の実力は? JAIA試乗会で記者が体験

新車価格が「400万円未満」の輸入車(外国メーカーの乗用車)の販売台数が12年ぶりに増加した。比亜迪(BYD)などの新興勢が廉価な電動車を国内に積極投入していることが一因だ。この価格帯のモデルは、輸入車市場の裾野を広げる上で重要な役割がある一方、円安や輸送費の高騰などで選択肢が減り続けてきた。“輸入車市場の間口”を制するのは新興勢力か、既存勢力か。日本自動車輸入組合(JAIA、ゲルティンガー剛理事長)の試乗会で実力を確かめた。

JAIAがまとめた2025年の同価格帯の販売台数は、前年比7.4%増の4万2789台。400万円未満の品ぞろえが多いフォルクスワーゲン(VW)が、24年に海上輸送の遅れで減少していた反動もあるが、それだけではない。BYDやヒョンデなどが価格競争力の高いモデルを相次いで発売したためだ。JAIAの調べによると、25年末時点の同価格帯の車種数は、36モデルと前年の34モデルと比べてわずかに増えた。

グローバルでの規制対応や技術の高度化を背景に、車両の値上げの流れは今後も続くとみられる。手の届きやすい価格のモデルが無くなれば、輸入車市場の縮小につながるリスクもある。それだけに、手ごろな価格を維持したモデルの存在意義は従来以上に増していると言える。

そこで、JAIAの試乗会では中韓勢と欧州勢の400万円未満のモデルを乗り比べた。具体的にはBYDのプラグインハイブリッド車(PHV)「シーライオン6」、ヒョンデの電気自動車(EV)「インスタークロス」、ルノーのハイブリッド車(HV)「ルーテシアエスプリアルピーヌ」、フィアットのマイルドHV「600(セイチェント)ハイブリッド」の4車種。同価格帯の中で、最量販車とみられるVW「ゴルフ」は試乗会に用意されなかったため、対象に入れていない。試乗車の選定趣旨に合わせ、「コスト配分」も意識しながら乗り比べた。

■インスタークロス

まずはインスタークロス。ヒョンデのEV「インスター」をベースにしたアウトドア仕様車だ。車体の側面や前後にオフロード風の部品を採用しつつ、価格を約370万円に抑えたモデルで、国の補助金を入れれば316万7000円で買える。

全幅は1610ミリメートルと今回の試乗会の中でも最小クラス。ただ、実際に乗車してみると、大人2人が並んで座る分には充分なスペースがあると感じた。慣れは必要だが、ドアミラー下のカメラで撮影した死角をメインモニターに映す機能をこの価格で採用しているのも買い得感がある。

一方、運転席の前方には10.25インチモニターがある。これは、ヒョンデの小型EV「コナ」に採用されている12.3インチのものより一回り小さい。小さな車格とのバランスは良いが、最近の大画面に慣れた人にはやや使い勝手が悪いかもしれない。

乗り味はEVらしく、加速がスムーズだ。輸入車の中ではコンパクトなサイズ感のため、狭い道の多い街中でも走りやすかった。

■シーライオン6

次はBYDが25年12月に発売したシーライオン6だ。価格は398万2000円。国の補助金は未定だが、補助金無しでも、トヨタ自動車や三菱自動車の競合車種を補助金付きで購入した場合よりも安い。

パワートレインはPHVだが、乗り味はEVそのもの。走行中はエンジンがほとんど始動せず、モーターの制御もEVらしい強い加速感があった。高速走行時の安定感の高さを感じた一方、山道などを低速で走行する際は路面からの突き上げが気になった。

内装はこの価格帯とは思えない充実度だった。ステアリングやインストルメントパネルなどに、安っぽさを感じる部分は見当たらない。部品共通化によるコストダウンの効果とみられる。個人的には、「アラウンドビューモニター」の使用時に障害物までの距離をセンチメートル単位で表示してくれる機能もありがたかった。

■ルーテシア

ルーテシアは、25年10月の一部改良で「エスプリアルピーヌ」だけのグレード展開になった。この見直しで価格が上昇したが、400万円未満に抑えた。

スポーツブランドのアルピーヌらしく、青色のステッチが入ったバケットシートとシートベルトに、スポーティーな印象を受けた。ただ、内装が充実していたシーライオン6の直後に乗ったこともあり、全体的に質素に感じた。

もっとも、ルーテシアは輸入車で珍しいフルHVという希少性がある。パワートレインの特徴はエンジン側に4段、メインモーター側に2段のギアを備える「電子制御ドッグクラッチマルチモードAT」という変速構造を採用しており、回転数の上昇と加速感が連動したダイレクトな操作感を感じることができた。

しかし、作動音の大きさに加え、動き出すタイミングも不規則なため、「エコドライブモード」でもエンジン音が気になった。それでも、手動変速機(MT)に近い走りをHVで楽しめる魅力は、十分な購入理由になりそうだ。

■600ハイブリッド

600ハイブリッドは今回の試乗会にベースグレード(365万円)が無かったため、上級仕様の「ラ・プリマ」(419万円)を試乗した。

フィアットらしいポップなデザインと、「500(チンクエチェント)」と比べてゆとりある後部座席や荷室空間が特徴。EVの設定もあるが、今回乗ったのは1.2リットルターボエンジンと電動ユニットを組み合わせた48ボルトのマイルドHVだった。エンジンの制御や操舵系も癖がなく、初めてでも自然に乗ることができた。走行中の静粛性も高かった。

ただ、ベースグレードは先進運転支援システム(ADAS)の機能が限定的で、上級仕様に搭載されているクルーズコントロールの「ストップ&ゴー」の機能や「ブラインドスポットモニター」の死角検知機能などは付いていない。購入検討時に検討する必要がありそうだ。

■総評

4台を乗り比べてみると、内装の充実度やスペックでは、BYDのコストパフォーマンスの高さを感じた。一方、操舵の安定性や乗り心地、使い勝手は、それぞれのブランドごとのアイデンティティーを感じられた。素材高に加え、為替環境でも逆風となっている輸入車の値上げは避けられない流れだが、「少し奮発すれば購入できるモデル」が無くなれば、これまで以上に輸入車が縁遠い存在になる懸念がある。インポーター各社にはブランドごとの魅力を残しつつ、手の届く車を提供し続けてもらいたい。

(水鳥 友哉、舩山 知彦)

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