EVベンチャー、広がらぬ市場に苦戦 JMS2025でも存在感薄く 逆境打破へ地力問われる

  • 自動車流通・新車ディーラー
  • 2025年11月13日 05:00

 電気自動車(EV)市場の停滞感が強まる中、これまで成長をけん引してきたEVベンチャーの存在感が薄れている。「ジャパンモビリティショー(JMS)」でも2023年の前回は盛り上がりに一役買ったが、25年は継続出展したところが少なかった。参加を見送った中には、EVの発売計画が遅れるなどして業績が厳しくなったとみられる事業者もいる。ただ、中長期で電動化が進むとの見方に変わりはなく、EVが一定のシェアを獲得していくのは間違いない。足元の逆境を打破し、再び成長路線へと舵を切れるのか。EVベンチャー各社の地力が問われている。

 JMS2023で新型の小型EVを出展し、話題になったベンチャーの1社だったFOMM(鶴巻日出夫代表、横浜市西区)。ここで公開した「FOMMツーコンセプト」を、26年にも発売する方針を掲げていた。ただ、資金調達などに苦戦。新型車の販売も「26年内に始めるのは難しい状況」(担当者)で、今回は車両開発を優先し、JMS2025への出展を見送った。

 電気バス(EVバス)などを開発するEVモーターズ・ジャパン(EMJ、佐藤裕之社長、北九州市若松区)も、JMS2025に参加しなかった。同社は前回のJMS以降、運送事業者などへの納車を進めており、実績を上げている。しかし、決算公告によると、24年12月期の売上高が80億円だった一方、営業損益は2億円の赤字、純損益も5億円の赤字にとどまった。北九州市に開設した組立工場の投資などが重荷になったようだ。

 加えて、同社のEVバスに不具合が発覚。国土交通省から立ち入り検査を受けるなど品質対策も求められている。JMSよりも、これらの課題解決を急ぐ判断をした可能性が高い。この件についてEMJにコメントを求めたが、回答はなかった。

 EVベンチャーが苦戦している原因の一つは、思うように市場が広がっていないことだ。JMS2023の時点では世界的にEVシフトの加速が見受けられたこともあり、国内でもEV市場の見通しを楽観的にみていた企業が多かった。ただ、24年度のEV販売台数(乗用車)が前年比27.7%減の5万7234台にとどまるなど、足元の需要には一服感が出ている。ベンチャー勢では、数年かけて広く投資を募りながら、事業規模の拡大を計画していたところが少なくない。EV市場に思わぬブレーキがかかったことで、各社の戦略に狂いが生じているもようだ。

 これは、ベンチャー各社の納車台数からも読み取れる。ベンチャー勢は小型モビリティを手掛けるところが多い。これらは全国軽自動車協会連合会(全軽自協、赤間俊一会長)がまとめている統計の「その他」でカウントされているが、25年4~9月は145台だった。この中には、JMS2023でも話題になったHWエレクトロ(蕭偉城社長、東京都江東区)などが含まれている。複数のベンチャーで構成していることを考えると、もの足りない印象で、ある関係者は「2年前の想定通りに車両を出荷しているベンチャーはほぼないのでは」と打ち明ける。

 一方、市場の変化にうまく対応したベンチャーもある。前回に引き続きJMSに出展したフォロフライ(小間裕康代表、京都市下京区)は、複数の事業者と共同で車両を開発する仕組みを導入し、開発費の抑制に取り組んできた。さらに、自前の商用EVだけではなく、中国・浙江吉利汽車(ジーリー)グループのZEEKR(ジーカー)と、乗用EVの代理店契約を結ぶなど、事業の領域を広げている。

 加えて、今春にはASF(飯塚裕恭社長、東京都千代田区)と資本提携。軽EVバンをフォロフライがOEM(相手先ブランドによる生産)調達している。ASFではJMS2025にも継続出展し、軽EVトラック「ASF2.0PT」を発表。今冬の発売を目指しており、これもフォロフライでも販売していく計画だ。ベンチャー両社がシナジーを高められる枠組みを目指している。

 小間代表は「個人事業主が多いため、需要を刈り取る手間が大きい」と、商用EVを取り巻く実態を明かす。こうした事情は他のベンチャーも同様とみられ、思うように需要を吸収できずに、車両の開発費が重荷となっているケースが想定される。小間代表はベンチャーが生き抜くためには「開発費と需要のバランスが課題」とし、さまざまな一手を打つ狙いを打ち明ける。

 経営資源が限られるベンチャー各社は、販促活動も地道に行っていくしかない。ただ、時間をかけすぎては、今、遅れを取っている大手メーカーが追い付いてくる。資本力を生かし、ベンチャーが得意とするニッチな分野に攻め込まれる可能性もある。国内のEV市場でアドバンテージを保っていくためには、ベンチャー各社に早期のステップアップが求められそうだ。

(舩山 知彦)

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