〈ニュースの底流〉脱・系列サプライヤー進めるホンダ ユタカ技研をマザーサンへ 新興市場開拓で生き残りへ

 ホンダが脱・系列サプライヤーの動きを加速している。69.7%出資する系列部品メーカーで、排気システムや駆動系部品を手掛けるユタカ技研を、インドの部品メーカーであるマザーサングループに売却することで合意した。将来的に電気自動車(EV)シフトが進むと、内燃機関関連部品を主力とする部品メーカーの事業縮小は避けられない。ただ、市場拡大が見込まれるインドなどの新興市場では、今後も内燃機関の需要が見込まれる。インド市場で存在感の高いマザーサンがホンダの系列サプライヤーの救世主となる。

 2040年までに内燃機関から撤退して新車販売をEVと燃料電池車(FCV)だけにすることを掲げているホンダは、EV時代でも系列サプライヤーが生き残るための対応を進めている。この一環として、24年に八千代工業(現・マザーサンヤチヨ・オートモーティブシステムズ)の株式を議決権ベースで81%、25年にはアツミテック(現・マザーサンアツミテック・オートモーティブシステムズ)の株式を議決権ベースで95%それぞれマザーサンに売却した。

 ホンダはマザーサンの買収後、両社の構造改革による体質改善が進み、収益力の向上が見込まれることを評価しており、今回新たにユタカ技研の買収をマザーサンに提案した。3社に共通するのは内燃機関車向け部品を主力事業の一つとしていることだ。ヤチヨは燃料タンク、アツミテックはエンジンやトランスミッション部品、ユタカ技研が排気系部品を手掛けている。これらの部品はEVには不要となる。

 排気系部品事業の売り上げが全体の6割以上を占めるユタカ技研だが、トルクコンバーターの量産技術で培ってきた高精度なプレス成型技術を生かして、車載用モーターのステーターコア事業に本格参入するなど、電動車時代に対応する事業の育成に注力してきた。同時に、経営ポートフォリオを拡充するため、ホンダグループ以外の受注を30年には400億円にまで増やす目標を掲げていた。

 ただ、ユタカ技研の25年3月期の営業利益率は前年同期から1.6ポイント低下して3.5%と低迷。また、同社は東証スタンダード市場の上場を維持するための改善期間に入っている。その中でホンダは、内燃機関関連部品の需要減少に対応するためには、ユタカ技研の株式を非公開化し、EV時代にも生き残るための大胆な戦略投資や迅速な経営判断が必要と判断。マザーサンに買収を打診した。

 一方のマザーサンは、成長市場のインドを中心に事業を拡大しており、部品メーカーのM&A(合併・買収)にも積極的だ。自動車部品事業はスズキのインド子会社であるマルチ・スズキ向けで成長してきたこともあって、日本企業の買収や提携に前向きで、ヤチヨ、アツミテックの買収以外にも市光工業からミラー事業を買収したほか、住友電装とは合弁事業を展開している。業績不振でマレリホールディングス(旧・カルソニックカンセイ)が2回目の経営破たんをすると、一時はスポンサー候補として有力視された。

 マザーサンはグローバルで事業を展開しているものの、基盤を持つインドをはじめとする新興市場では今後も内燃機関は一定の需要が見込まれる。ユタカ技研が手掛ける排気系部品についてもマザーサンのネットワークを活用すれば事業拡大のチャンスが広がる。さらにマザーサングループが持つ製品や技術と融合することで、競争力の強化も図る方針だ。

 ホンダは、マザーサンにユタカ技研の株式を売却した後も議決権ベースで19%保有する。EV市場の成長率が伸び悩む中、ホンダは内燃機関車から撤退する計画は取り下げていないものの、当面はEV関連投資を縮小してハイブリッド車(HV)に重点を置く。市場環境の先行きが不透明な中、将来のEV時代を見据えながらも、柔軟に対応できるように系列サプライヤーとのつながりを緩やかに維持していく戦略が読み取れる。

(編集委員・野元 政宏)

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