〈車笛〉上野アメ横で〝ドリフト体験〟 老舗化粧品店がレーシングシミュレーターショップ開店

  • クルマ文化・モータースポーツ
  • 2025年6月4日 05:00

■レーサーになりたい若者を増やす

 上野アメ横商店街(東京都台東区)に〝ドリフト〟の体験を通じて、若者の車やレースに対する関心を高めようという〝レーシングシミュレーターショップ〟が出現した。化粧品などの販売店を営むシルクロード化粧品(同、鈴木敏道代表取締役)の新事業部「KC KINETICA(ケーシー・キネティカ)」が開いた店舗だ。部門代表を務める米国出身のドリフトレーサー、カイル・クーニーさんは「サーキットを走ってみたい、本物の車を運転したい、レーサーになりたいと思う若者を増やす」ことを狙い、走りの楽しさを気軽に体験できる場を作ったという。

 同社は1951年、東京・上野で化粧品店を開業、79年アメ横商店街に本店を構えた。今では商店街の老舗として知られている。そして2024年12月、「化粧品店パートⅣ」の3階にモータースポーツの練習に活用可能な高性能レーシングシミュレーターの販売と体験機会の提供に取り組むショップを開いた。

 同社が取り扱うシミュレーターは、世界で初めて量産車のフルモーションシミュレーターを実現した米シグマインテグラルの機構を取り入れた。新ショップはそのアジア初の公式インテグレーターとなり、アジア全域でシミュレーターの販売・設置・修理などを担うことになった。合わせてレース用車両・部品の販売やコンサルティングなども行う。

 レーシングシミュレーター関連事業は、同社初の試み。アメ横周辺の秋葉原や浅草などには、すでに知名度が高く同店よりも規模が大きいレーシングシミュレーションショップがある。そこに割って入る形となった。

 この状況についてアメ横通り商店街振興組合理事長でもある鈴木代表は「『何でもあり』がアメ横の特徴。その中から大きく成長していった会社もある」と、新事業を商店街に吹き込む新風として、今後の成長と地域活性化への貢献を期待している。

■走りの訓練に最適な設備

 店内には、シグマインテグラルの「DKモーションシステム」を搭載したレーシングシミュレーター2台が設置され、レース走行のレッスンや店内のシミュレーター同士での対戦も行えるようにした。実車と同じ操作感覚のハンドルやブレーキを採用し、モータースポーツのトレーニングに適したシミュレーターに仕上げた。

 特に力を入れるのは、ドリフトレースのレッスンだ。鈴木代表の子で、クーニーさんの妻である同社最高執行責任者(COO)の鈴木智香子さんは、「われわれは新参者だが、他店にはない現役ドリフトレーサーによるレッスンが一番の強み」と強調する。そして「ドリフトのシミュレーター屋さんはケーシー・キネティカだと意識してもらえるようにしていく」と意気込んだ。

 そのカギを握るクーニーさんは、34歳で15年のレース経験を持つ。クーニーさんと智香子さんは、14年に米国カリフォルニア州のオレンジコーストカレッジ在学中に知り合った。その後、クーニーさんが3年前に活動の場を日本に移し、ドリフトレースの練習用にレーシングシミュレーターを購入したことが、同社の新規事業参入のきっかけになった。

■夫婦で業界への貢献を

 クーニーさんは24年に日本でレース活動を開始した。つくるまサーキット那須(栃木県那須塩原市)で開催される「ドリフト競技大会TCNドリフトパフォーマンスチャレンジ」のMAクラスに2回出場。ドリフトレースには、1台ずつ走行する単走と2台が接近した状態で走行する追走の競技があるが、24年11月の大会では単走と追走の両方で優勝。今年3月の大会では追走の優勝を飾った。

 その活躍ぶりを知り、指導を受けようと来店する人が増えている。地方から東京に遊びに来た人たちなどが、同店に立ち寄るようになったという。英語での指導にも対応しているため「英語も学べる本格レースゲーム」と捉えて利用する中学生などもいる。

 クーニーさんがシミュレーターの事業を始めたいと考えた理由は「レースをする人に若者が少ない。若者の車離れということもある。ドリフトでモータースポーツが盛り上がってほしいという気持ちがあった」と言う。

 その気持ちを智香子さんと共有。ドリフトのレッスンを武器にしたレーシングシミュレーター事業を通して、二人三脚でモータースポーツ人口の拡大に貢献したいとの思いを強めている。

(遠藤 幸宏)

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