日産、ルノーとFCAが経営統合した場合、アライアンスの関係見直し

力関係の逆転に警戒 目的は日産の先進技術?

  • 自動車メーカー
  • 2019年6月4日

日産自動車は、ルノーとFCA(フィアット・クライスラー・オートモビル)が経営統合した場合「ルノーの会社形態が大きく変わることになるため、これまでの日産とルノー両社における関係のあり方を基本的に見直していく必要がある」との西川廣人社長兼CEOのコメントを発表した。ルノーは6月4日の取締役会でFCAとの経営統合を協議する予定。

ルノー・日産・三菱自動車の3社アライアンスにFCAが加入すると、世界販売が1500万台以上の巨大自動車メーカーグループが誕生することになり、部品共通化や共同購買などのシナジーが見込まれる。加えて、自動車業界のトレンドである自動運転や電動車両、コネクテッドなどの先進技術の開発コストを分担し、短期間に低コストでこれら先進技術を実用化できるチャンスは広がる。

このため、日産はルノーとの経営統合によってFCAがアライアンスメンバーに加わると「新たにその領域、間口が広がり、シナジーを拡大するオポチュニティ(機会)があると考える」としている。

ただ、アライアンス主導権争いで、日産には不利に働く可能性がある。現在、日産はルノーの株式15%を保有するのに対してルノーは日産に43.4%出資する筆頭株主だ。しかし、日産の2018年度の世界販売が551万台、売上高が約11.6兆円なのに対してルノーの世界販売は388万台、売上高も約574億ユーロ(約7兆円)にとどまる。

ここに世界販売484万台、売上高が約1154億ユーロ(約14兆円)のFCAとルノーが経営統合すると、2018年実績の単純計算で販売台数が872万台、売上高が約21兆円となる。日産が33.4%出資する三菱自を加えた日産・三菱自グループの販売台数は675万台、売上高は約14兆円。経営統合したルノーFCAがアライアンスの主導権を握るのは確実で、今後、関係性が見直される。ただ、日産ではアライアンスから離脱する選択肢はない模様だ。

ルノーは筆頭株主のフランス政府の意向もあって日産との経営統合を求めてきた。このため、経営統合して力を増したルノーFCAが日産を子会社扱いすることを日産側は懸念する。3社アライアンスでは、電動車両や自動運転などの先進技術で、実質的に日産が先行しており、これら先進技術を取り込み、自由に活用することがルノーとFCAが統合する目的の一つと見られることも日産が警戒する理由だ。

日産では「(FCAとルノーの経営統合を想定し)今後、日産の利益確保の観点から、これまでの契約関係や業務の進め方などについて、分析ならびに検討を進めていく」としている。

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