三菱電機モビリティ(東京都千代田区)の田中和徳社長は、機能を軸とした組織再編を進めるとともに、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の出資受け入れを通じて、相乗効果を期待する。足元や展望を聞いた。
-2025年度は利益率が改善した。
「売上高や数量を追う経営から、利益を伴う成長を重視する経営へ転換した成果だ。不採算案件の見直しや価格適正化に加え、固定費の削減や組織改革を進めた。利益率は6%を超える水準まで改善したが、これは一時的なものではなく、事業構造を変えた結果だと考えている」
「組織改革も進めた。従来は地域ごとの組織運営が中心だったが、地域単位では技術や開発機能が重複し、効率が低下する場面もあった。そこで世界共通で製品や技術ごとに責任を持つ『機能軸』へ移行した。意思決定が速くなり、開発リソースも最適配分できるようになった」
-市場環境は
「不確実性が非常に高く、数年前に描いていたシナリオ通りには動いていない。一方で、長期的に電動化やソフトウエア化が進む方向は変わらない。その中で重要なのは、市場の変化に合わせて経営資源を素早く動かせることだ」
「電動化投資は継続する。短期的な市場変動だけで投資を止める考えはない。電動化製品やソフトウエアへの開発は将来の競争力を左右する。ただ、投資は収益とのバランスが重要になる。利益を生み出す既存事業があるからこそ、次世代技術への投資を続けられる」
-ソフトウエア・デファインド・ビークルへの対応は
「ハードウエアだけでは差別化が難しい時代になってきた。制御ソフトやシステム全体をどう最適化するかが価値になる。当社も単品部品ではなく、システムとして提案できる体制づくりを進めている」
「ドライバー・モニタリング・システムは、安全性や運行効率を高めるための基盤技術へと位置付けが変わってきた。乗用車だけでなく商用車でも重要性は高まっており、ドライバーの状態把握に加え、先進運転支援システムや自動運転との連携によって価値が広がるとみている。車両全体の制御やソフトとの連携まで含めて手掛ける。モニタリング(監視)やアフター(後付け)も対応を進める」
-アイシンと進めているeアクスルの共同開発は
「プロトタイプは完成した。あとはそれをさまざまな車種に対応するよう展開していく。特に高出力な上級車やコンパクトな小型車といった分野で差異化していきたい。さまざまな補機も入ったいわゆる『xイン1』が特徴になる」
-鴻海精密工業の出資を受け入れる
「鴻海は電子機器の製造受託(EMS)の枠を超え、自動車分野で存在感を高めている。ものづくりの手法やサプライチェーンの考え方も従来の自動車業界とは異なり、業界全体に新たな選択肢をもたらしている。当社が長年培ってきた車載品質や制御技術の価値を通じ、シナジーを発揮したい」
「まずは当社が持つ既存の技術や製品をベースに、どのような価値を提供できるかを検討していくことが基本だ。その上で、新たなニーズに柔軟に対応していく。三菱ふそうトラック・バスと日野自動車の経営統合に象徴されるように、開発投資を分担しながら競争力を高める動きが加速している。当社としても、共通プラットフォームとして展開できる技術を磨き、その上で顧客ごとの要求に応えていく」
〈プロフィル〉たなか・かずのり 1989年明石工業高専卒、90年三菱電機入社、姫路製作所所長などを経て、2024年12月から自動車機器事業本部副本部長、三菱電機モビリティ副社長などを経て25年4月1日、同社社長。1969年2月23日生まれ、57歳。兵庫県出身。
(野元 政宏、山本 晃一)



















