新しく採用したスタッフはもちろん、今いるスタッフにも長く働いてもらうためには、従業員満足(ES)を高めることが不可欠だ。給料や休日などの待遇面だけではなく、スキルアップのための仕組みや経営者の思いも伝えていく必要がある。ES向上の手段はさまざまだが、目指すのは「この会社を選んで良かった」と思ってもらうことだ。
大型車整備を手掛けるアミック(福島勇人社長、群馬県玉村町)は、10年以上前から社員の残業時間の削減を進めている。外部に委託した社員の意識調査の結果が想像以上に厳しかったため、社員の不満を取り除く狙いで最初に取り組んだのが残業時間の削減だった。
具体的にはサービス営業の担当者が取ってくる仕事の平準化を図り、常態化していた急な飛び込みの仕事にも事前の連絡を求めるなどした。これらにより、月60~70時間生じていた残業を、現在は40時間程度まで減らすことができた。福島社長は残業以外にも社員の不満を把握して適宜改善していくことで、家族にも応援してもらえる会社を目指している。
オートガレージ(岡壮彦社長、宮城県東松島市)も残業をなくす取り組みを進めている。このきっかけは、2011年の東日本大震災だった。同社が被災し、休業に追い込まれたことを契機に働き方への考え方が変わった。以前は「たくさん仕事をして稼ぐ」(岡社長)ことに重きを置いていたが、「日曜や祝日は(社員が)家族と一緒に過ごせるようにする」(同)ことを重視するようになった。
同社は13年に事業を再開したが、このタイミングで経営理念などを一新し、社員と目指す姿を共有。現在は午後6時半の営業終了とともに帰宅できるよう、6時過ぎには片付けを始めるなど定着している。その分、業務時間内で効率的に作業を進めるという意識も高まっている。
経営者の価値観が変わったことで、ESの取り組みが進んだケースもある。東和自動車(埼玉県三郷市)の大山貴洋社長は、副社長時代に提案した業績回復のための取り組みが社員の理解を得られず、体調を崩して出社できない状態になったという。これを契機に、経営の目的を「みんなのためにどうするか」に変えたことで、社内の雰囲気が少しずつ変わっていった。
現在は役員と幹部社員の意見交換が頻繁に行われ、社員への情報発信を幹部に任せることも増えた。社員が役員に話しにくいことも幹部を通すことで、現場の声を吸い上げやすくした。これにより、会社の方針がスムーズに浸透するようになったという。
社員の意欲を高めるには仕事を続けることで、どのようなキャリアを形成できるかを会社が示すことも必要となる。トヨタカローラネッツ岐阜(田口隆男社長、岐阜市)は24年4月、若い整備士が自分の将来像を描きやすくする狙いのキャリアプラン制度を立ち上げた。この制度によって「(キャリアの)終着点は自分自身で設定する」(同社)との方針に変わったことで、個人の志向や適性に応じて複数のキャリアを選択できるようにした。
2年間運用したことで、整備士からは「将来のイメージが持てるようになった」という声が上がるようになり、社内研修を受講する意識も変わったという。さらに、ここまでの2年間で整備士の自己都合退職が4人と、離職率の改善にもつながった。現在は営業スタッフにも対象を広げ、社員の70%以上を同制度の対象にしている。
整備戦略5月号では特集「ES向上へのアプローチ」を掲載します。




















