ホンダ、初の最終赤字 急速なEV減速読み切れず巨額投資が裏目に 新たな競争軸打ち出せるか

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  • 2026年3月13日 05:00

ホンダが上場以来初めて、最終赤字に転落する。電気自動車(EV)関連の損失は、2027年3月期も含めて最大2兆5000億円になる見通しだ。米国でのEV市場の急速な冷え込みを読み切れず、前のめりだった巨額投資が裏目に出た格好だ。5月に公表を予定する新たな事業戦略で、巨額の赤字を乗り越えるEV以外の新たな競争軸をどこまで打ち出すことができるか。

「複数のシナリオを想定して戦略を修正する対応ができていなかった」。3月12日のオンライン会見で三部敏宏社長は悔しさをにじませた。

社長に就任した21年、日本メーカーで初めてエンジン車の販売を40年に全廃する目標を打ち出した。翌年、30年までに年間200万台のEV生産体制を構築し、EVを30車種投入する方針を打ち出した。24年には車載電池で約2兆円、生産領域で約6兆円投じる計画を発表するなど、EVに経営資源を集中投下する姿勢は国内メーカーでも突出していた。

三部社長が就任した当時は、ホンダが主力市場とする米国と中国でエンジン車の締め付けが強まることが予想されていた。独創的な内燃機関の技術で存在感を打ち出してきただけに、エンジン以外で「ホンダらしさ」を打ち出すことに重きを置き、生き残り策として「EV一点突破」の戦略に舵を切った。

だが、EVシフトの目算は大きく狂った。米国では環境規制の緩和が進み、EV補助金が廃止されたことで市場成長のスピードが大幅に鈍化した。三部社長は「当初、想定していた半分以下にまで市場が冷え込んでいる」と話す。

米国のEV減速に伴う戦略の微調整は進めていた。米国でのEV投入のスピードを速めるためゼネラル・モーターズ(GM)とEVの共同開発に乗り出したが、24年投入の「アキュラZDX」はわずか1年で生産を終了。「プロローグ」も販売不振に伴い25年3月期に減損損失を計上していた。カナダのEV専用工場の投資を2年以上遅らせることも決めた。

今回、EV戦略の“本丸”であった自社開発の「ゼロ・サルーン」など3モデルの開発中止を決断した。三部社長は「判断を先送りせず、将来に負債を残さないため、断腸の思いだが中止を決断した」と説明し、40年のエンジン車全廃の目標についても「現実的には達成困難だ」として見直す考えを示した。

最大2兆5000億円に上るEV関連損失は、主にEV開発および設備の減損と、すでに部品の供給準備に入っているサプライヤーへの補償費用が含まれている。

“止血”を決断するタイミングとしてはぎりぎりだったと言えそうだ。三部社長は25年10月の「ジャパンモビリティショー」で3台のゼロシリーズを並べ、「27年度中に国内に届ける」と宣言していた。それから半年足らずで方針転換した訳だが、経営陣の判断が遅れていれば、損失はさらに拡大していた可能性がある。

業績面では巨額の損失を決断したが、事業面の視界はまだ晴れない。ホンダの米国EV生産能力を活用して投入する予定だったソニー・ホンダモビリティ(SHM、川西泉社長、東京都港区)の「アフィーラ」の行く末が注目される。SHMの担当者は、導入時期やプロジェクトの今後について、「親会社で協議していくことになる」と話す。計画が延期されているカナダのEVサプライチェーン(供給網)についても今後の見通しは示されていない。

バブル崩壊やリーマンショックもかいくぐり、黒字を維持し続けてきたホンダの巨額損失は、EVシフトをめぐる投資判断の難しさを浮き彫りにした。EV需要が鈍化する一方、テスラや比亜迪(BYD)といった新興メーカーの台頭によって、技術軸の競争環境は激しさを増している。ホンダは独創性を持った「技術者集団」に立ち返り、新たな事業戦略を示す必要がある。

(編集委員・福井 友則)

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