第4回整備事業者アワード2025の「日刊自動車新聞社大賞」は、いづみ自動車(蛯名一二三社長、千葉県市原市)が獲得した。採用コンサルタントが提唱した考えをベースとし、独自プログラムとして「すごいスタッフ採用(すごサイ)育成プロジェクト」を開始し、〝採用の仕組み化〟を実現した。同プロジェクトの推進により、スタッフの採用と育成レベルが向上し、既存スタッフの意識改革と業務内容の明確化、効率化につなげている。
現在は「すごシリーズ」として、すごサイのほか、「すごいトレーニング(すごトレ)」「すごいメカニック(すごメカ)」「すごい伝票(すごデン)」の4つが進行している。
このきっかけは、田村圭会長が2022年の社員決起大会で「すごいブランディングプロジェクト」を発表したことだ。背景には人材の不足感と、大型車整備を手掛ける人材の教育環境が整っていないことに危機感を強めたことなどがあった。実際、この数年で一連の課題は深刻さを増している。蛯名社長は「会長が10年ほど前から『人材育成と教育がこれからは一層大事になる』と繰り返し伝えてくれていたことがなぜだったのか、今になって非常によく分かる」と振り返る。その上で、「すごシリーズの最も優れているポイントは社員教育につながっていること」と社員の成長を実感している。
経営管理グループ経営企画担当の樫原薫さんは「現在の中堅クラスの整備士らが、将来会社のかじ取りをするときに向けた教育」と捉え、長いスパンで幹部の思考力やマネジメントなどに向けた育成にすごシリーズを採り入れている。ただ、考え方を全社員に浸透させるためには、根気も必要だ。樫原さんは1週間に最低1回はウェブ会議システム「ズーム」のチャット機能で、全社向けに粗利の勉強やすごデンの書き方など、テーマを変えて意識を保ち続ける発信を続けている。
田村会長はすごシリーズについて、ブランディングの一つであることを強調し、今後の発展も視野に入れている。「すごシリーズの仕組みは関心を持った同業者にはオープンにしている」というが、「大型車整備業界として〝大型車整備の標準〟が今後はなくてはならないはず。〝整備技術会〟のような共有できる組織があっても良いのでは」と考えるからだ。その根底にあるのは、物流を止めないということ。今後、自動運転車両などが増えていくことが想定される中、整備の重要性は一層重要となる。商用車の整備ができる人材を育て、増やすためにも、大賞受賞をきっかけに、すごシリーズの認知拡大につながる活動を加速させる考えだ。
〈蛯名一二三社長コメント〉
表彰式に同行した樫原は「大賞を狙いましょう」と最初から言っていたが、実は本当に大賞が取れるとは思っておらず、会場で名前が呼ばれた時にはうれしくて思わずハイタッチをした。受賞インタビューを社内チャットで流したが、みんながリアクションをしてくれてうれしかった。大賞を獲得したことは、今後さまざまなアクションをしていく上で非常に大きなことだ。今後も発展させていきたい。
(太田 千恵)
=連載おわり=