ニデック(旧日本電産)の創業者、永守氏

各社の株主総会が集中する6月20日。中でも注目されたのが、ニデック(旧日本電産)。創業者の永守重信グローバルグループ代表による「永守節」に触れようと、信奉者の集まる「ファンミーティング」のような場でもあるが、今年は、牧野フライスへの同意なきTOB撤回も話題になった。

TOBが話題になったのは後半。株主から「経営側の報告の中で触れられていない。これは些細なことだからなのか、深い理由があるのか。今後の経営に対して大きなビジョンの一環だったのではないか」との質問が出た。

岸田光哉社長が「(触れないのは)ニデックの潔さだと思う。もし成功していたら、あれこれ話していたと思う」と詳細なコメントを避けたのに対し、永守氏は「絶対に買えたと思う。今回がダメでも次がある。こだわらない」と、次なるM&Aに意欲を示した。

永守氏は「いろんなことを新聞などに書かれたが、現在のようなマーケットでは、私のやり方(同意なきTOB)は通用しない。あと20年くらいかかるのでは。海外ならさっと終わっている」と、自身がグローバルスタンダードとの考えを示した。

その上で、牧野フライスによる対抗策の差し止めが裁判所に認められなかったことを振り返り「判決はとやかく言えない。負けたら終わり。この会社にこだわらなくても、会社は世界中にいっぱいある。何か言われたとしても、やめたいからやめた。会社のポリシーに合致しないからやめた。判決が出たとたんに10秒以内にやめた」と、判断を説明。

「これからも良い会社をきちっと買って、従業員と一緒に取り組み、今までのように一緒にやって良かったと思えるようにしたい。無理やりにでもやるつもりはない。がっかりすることも時には必要。何でもかんでも上手くいくことはない。これからも、やってみるけど、上手くいかなかったらやめる。迷ったらやめておこうと、自分の人生で決めている。相手が(価格を)上げたら、うちも上げるなんてしない」とも明かし、TOB合戦は避けるなど「撤退の美学」を強調した。

その上で「次もやりますから」と、さらにM&Aに臨む姿勢を付け加えることも忘れなかった。

また、株価に関連して「1株1円で買ったつぶれた会社が100億円単位で利益を出しているような例もある。努力努力、我慢我慢ですわ。成長の条件は我慢。つぶれた会社をこれまで買ってきたのは、本質的にはものすごくいい会社だから」と、買収哲学を改めてひとくさり。その上で、「膨張ではなく成長しなくてはいけない。中国で戦いに負けたというが、それは中国政府が中国企業に(補助金など)お金をバンバン使っているから。だから方針を変えて日本の代表的なメーカー(トヨタ)に採用が決まった。株価の話については、待てば待つほどリターンがある。何か文句ありますか?」と改めて「長期保有のススメ」を説いた。

後継者論も定番のやりとりだ。

「彼(岸田社長)を選ぶまで200人と面接した。使ってみても全然だめなこともあった。そんないい人はいない。そこから選んだ2人はダメだった。(岸田社長は)本物ですよ」と改めて「本物論」を強調。「今回は慎重に育成している。腹が立ってもぐっとこらえて。社長を見て、いい人を取ったなと思った」とも。これまで、眼鏡にかなわない人材を次々に放出してきただけに、今回は気長に待つ姿勢を示したようにも聞かれた。

ただ、「今の彼(岸田社長)の話はおもしろくない」と、冗談めかしてなのか、不満もちらり。「会社の規模が拡大する中で、1人でどうにかできる時代は終わった。これから外国人がここに立つようになるかもしれない。やり方も変えなくてはいけない。プロパー社員も採用し、力があるものが育っている」と次世代に期待した。

その一方で「私は簡単に姿を消しませんが、より良い経営をしてもらえば、私はいらない」と、さらなる続投にも意欲を示した。