誠実で前向きな活動が認められた
坪井英倖社長

 坪井自動車鈑金(坪井英倖社長、岐阜県大垣市)は、SDGs(持続可能な開発目標)を軸とした経営方針で注目を集めている。かつては深刻な人手不足に直面していたが、現在では「ここで働きたい」と自然に若者が集まるようになった。理念に基づいた継続的な取り組みが、働き手の共感を呼んでいる。

 2020年、岐阜県の「ぎふSDGs推進パートナー登録制度」において最上位の「ゴールドパートナー」に選ばれた。人材確保や働き方改革、環境への配慮など、社会的課題へ真剣に向き合ってきた姿勢が高く評価された。

 坪井社長は「SDGsのために何かをしたというよりも、自分たちがやりたいことを追求してきた結果、それがSDGsの考え方と重なった」と振り返る。

 また、社員や地域住民の健康増進に取り組む企業として「健康経営優良法人」(日本健康会議認定)にも選ばれている。年間休日120日以上、残業原則ゼロという働きやすい環境を整えながらも、高い技術力と質の高いサービスを安定して提供している。スタッフ一人ひとりが仕事に誇りを持ち、意欲的に働けるよう薄利多売を避け、スキルアップにつながる案件の受注に力を入れてきた。

 こうした方針により業務の質が向上し、スタッフの意識にも変化が生まれた。その結果、顧客満足度が高まり、職場には好循環が生まれている。

 最近では、環境に配慮した塗料「パイオニアシリーズ」の長年にわたる使用実績が評価され、BASFジャパン(石田博基社長、東京都中央区)から取り扱い認定工場の第1号企業として選ばれた。同シリーズは高価格帯に分類され、色の再現性や光沢の持続性など、あらゆる面で最高水準の品質となっている。さらに、製造過程でも人権や環境への細かな配慮が徹底されている。

 これらの価値は、一般客には見えにくい部分ではあるが、その〝見えない価値〟こそが、坪井自動車鈑金の信念の象徴といえそうだ。

 地域に根差した町工場が、国際的な取り組みとつながりながら、新しい働き方やものづくりの姿を発信している。これまで積み重ねてきた活動や社員の主体的な姿勢は社内にしっかりと根付いており、大手生命保険会社の担当者を通じた若手人材の採用にもつながった。

 坪井社長は「スタッフも、お客さまも、地域も大切にしながら、これからも時代に合わせて変わり続けていきたい」と、今後の展望を語る。

 〈坪井英倖社長コメント〉

 これまで当社は「認定を得ること」を目的とするのではなく「人や社会のために何ができるのか」を追い求めてきた。その積み重ねが、SDGsや健康経営の実践を通じて共感や信頼を生み出し、人材の定着や社会からの評価につながっていったことは何よりの励みとなっている。今後も地域と社会に必要とされる企業であり続けられるよう、誠実に一歩ずつ取り組みを深めていきたい。

(友田 昭人)