乗用車や大型車の整備などを手掛ける新明工業(近藤恭弘社長、愛知県豊田市)は、整備工程を解説する動画を用いて整備士を育成している。これまで紙テキストや実践で習得していた過程を映像化し、新人整備士の理解度を高めた。多言語の字幕を表示する機能を付けることで、外国人材への教育にも対応している。
同社では整備士が正確な整備を適切な時間で行えるよう「標準作業」を設定している。複数スタッフが当時に作業する車検や12カ月点検などにおいて、オペレーションの順序や使用工具といった基準を定める。そのため、新たに整備士が入社した際には、1ヵ月の研修期間内で標準作業を徹底的に教え込む。
そこでは従来、紙テキストを用いた座学と、実習教材による練習を行ってきた。しかし、紙の資料に慣れていない若年層や、技能実習生などの外国人材の理解が進まないとの問題があった。
その対策として、昨年3月から標準作業の流れを解説する動画を自社で作成し、研修時に活用する取り組みを始めた。特徴は繰り返し視聴しやすいよう、1本当たり4分程度の短い動画としたことだ。例えば、大型トラックのホイール組み付け作業では、全体を8工程に分けて1つずつ動画を作成。任意の工程を何度も確認できると同時に、すべての動画をつなげると作業全体の流れが理解できるようになっている。
動画には日本語字幕を付けており、自動翻訳機能を用いて36カ国語に変換することが可能だ。同社の自動車整備部門には、技能実習生など20人以上の外国人材が在籍している。国籍もインドネシア、カンボジアなどさまざまで「整備学校を卒業した人材と異なり、技能実習生には自動車の構造から教える必要がある。字幕を切り替えることができ、構造も作業も視覚で分かる動画は大きな武器になる」(教育担当の中村槙吾グループリーダー)という。
現在、動画を作成しているのは乗用車の点検作業と、大型トラックのホイール組み付け作業に限定される。その内容も経験の浅い整備士に向けたものだ。将来的には全メーカーの乗用車・トラックの標準作業を網羅することを目指す。また「属人化しやすいエンジンやトランスミッションのオーバーホールなど、高難度整備の解説動画も作成し、会社全体の技術を高めたい」(同)と話している。
〈自動車事業本部 業務管理部 推進・総括管理室 総括グループ 中村槙吾グループリーダーコメント〉
動画の活用が始まって約1年と短く、受賞できるとは思っていなかったので大変感激している。上司をはじめ社内からの反響があり、新人整備士の教育にさらに弾みが付くのではないか。効率的な整備作業や育成手法が確立すれば、多くの社員にとって働きやすい会社になる。今後は重整備に関する動画など、中堅やベテランの技術向上に向けたコンテンツも展開したい。
(中部支社・若下 航平)