東和自動車販売
大山貴洋社長

 東和自動車販売(大山貴洋社長、埼玉県三郷市)は、7月に創業70年を迎える。長きにわたり地域に根差した経営を行ってきたが、高齢化で免許を返納する顧客が増えたことや新規顧客数の伸び悩みが原因で業績が悪化していた。そこで2020年、異業種から整備工場の経営者に転身した大山社長は改革に乗り出した。4年間で売り上げは倍増し、新規顧客数が年3組から同400組に伸長するなど大きな成果を挙げている。

 最初に取り組んだことは、顧客目線の改革だ。地域住民から「何をしている会社なのか分からない」という声があったため、のぼり旗や入り口のサインを設置して、来店しやすい雰囲気をつくった。また、応接室やショールームを居心地の良い空間にするためにレイアウトを見直した。さらに、「グーグルマップ」の口コミ強化や入庫予約のオンライン化を実施するなど顧客の利便性向上につなげた。

 改革が進む一方で、社員とのコミュニケーション不足が顕著になった。長年勤める会社が変化することに抵抗を感じる社員の不満が職場の雰囲気に表れるようになったという。大山社長は、「企業理念の〝正直に。人に喜ばれる仕事をする。〟の意味を考え、顧客だけではなく、社員や取引先にもよろこんでもらうことができる会社づくりに取り組む」ことにした。

 まずは、会長と社長が社員一人ひとりと面談する機会をつくった。初めは文句が多かったが、次第に新しい発想も出てくるようになった。今では、あえて場を設けなくても互いに意見を言える関係性に変化してきた。大山社長は「会社の実績が伸びて、見る目が変わったのでは」と分析している。

 会社の経営に、社員の声を反映している。誕生日にホールケーキをプレゼントする、季節ごとにランチを提供するなどのユニークな福利厚生を設定した。社内のコミュニケーションが活発になり、明るい職場になったという。会社の雰囲気が変わったことが自然と外に伝わったのか、管理職経験のある整備士が同社で働きたいと飛び込んできたこともあった。

 大山社長は「ベテラン社員には厳しい状況の中で残ってもらった。うまくいったからこそ還元していきたい」と話す。「社員が輝き、人が自然と集まってくる場所をつくり、ゆくゆくは地元を盛り上げていきたい」という思いを胸に、さらなる飛躍を目指して従業員満足(ES)と顧客満足(CS)を高める改革を進めていく。

 〈大山貴洋社長コメント〉

 経営者の正解がない中で、報われた思いだ。社員に誇りを持ってもらいたい中での受賞は誇らしい。祖父の代から働いている社員も喜んでくれている。当社が取り組み、積み上げてきたことが評価されて勇気が湧いてきた。当社には高い技術力を持つ整備士がそろっている。7月からは会社名を東和自動車に改め、さらに整備を強化していく方針だ。

(茅根 遥)