ヤマハ発動機は、小型特殊自動車に分類される電動トラクターを2026年後半に市場投入する。初年度の販売計画は300台。モーターや車体フレームは既存技術を活用し、ホンダの着脱式バッテリーを導入するなどして開発期間を短縮。車両コストも抑えたという。器具を後付けできるアタッチメントを備えることで幅広い農作業に対応するほか、2人乗りとしたことで免許返納後の高齢者の移動手段としても想定する。9日からは同車と同じプラットフォーム(車台)を採用した車両で、空港内の手荷物運送サービスの実証実験を開始する。今後も同車をベースに多様な小型電動車を展開し、新たな移動ニーズを掘り下げていく。
ヤマハ発は5日、小型低速電気自動車(EV)の汎用プラットフォーム「ディアパソン」を利用したトラクター「C580」を報道陣に公開した。畑地や不整地を走行できるEVで、小型特殊自動車として公道走行も可能とする。車体サイズは全長2150ミリメートル、全幅は1200ミリメートルで、車重は250キログラム以下とし、軽トラックの荷台に積載可能なサイズとした。小型特殊自動車なので、最高時速は15キロメートル以下に制限される。
プロジェクトを主導した共創・新ビジネス開発部の大東淳氏はC580について「競合はほぼいない」と胸を張る。国内で小型特殊自動車のEVはヤマハ発が初めてで、2人乗りのトラクターも現在は他では販売されていないという。EVなので作業時に排気音が出ないため、畜産での利用もメリットが大きいという。
2人乗りのバギー風デザインを採用するなど、農作業にとどまらない新たなモビリティに仕立てた。排土板のドーザーや農作物を乗せる荷台を追加できるが、あくまで軽作業を想定しており、クボタやヤンマーなど農業機械メーカーが手掛ける本格的なトラクターとは異なる性質を持つ。
大東氏はディアパソンについて「既存のアセットを最大限に活用した」と話す。ヤマハ発が持つ既存の部品や社外の技術を活用して、コストと開発期間を短縮したのも特徴だ。小型軽量高効率モーターや軽量パイプフレームは内製で、バッテリーはホンダの「モバイルパワーパックe:」を活用する。脱着式バッテリーはガソリンスタンドの廃業が目立つ地方においては、利便性向上につながると見る。
デザインには生成AI(人工知能)を活用したのも特徴だ。知的財産権に対応した生成AIにヤマハ発のデザインアイデンティティーを読み込ませ、「通常は半年以上かかるところを1カ月でデザインした」と大東氏は説明する。これにより開発期間を大幅に短縮した。
C580を小型特殊自動車として開発した背景には、農業従事者の高齢化がある。普通自動車免許を返納しても申請すれば小型特殊免許は残すことが可能だ。「普通自動車免許を返納しても農業を続けたい」というニーズが今後増えることを見越し、作業車の枠組みを超えた新たなトラクターのコンセプトを生み出した。今後は、各地域で開かれる農業関連の展示会などにC580を出展していく。プロトタイプの試乗などを通じて、26年下旬のモニター販売に向けて製品仕様を仕上げていく。
また、トラクターの市場導入に先立ち、東京国際空港(東京都大田区)ではディアパソン「C310」を活用した手荷物輸送サービスの実証実験を開始する。通常の旅客機より荷物が少ないプライベートジェットの手荷物輸送に活用し、空港内のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に貢献するなど、小型電動モビリティの需要を開拓していく考えだ。




















