「今後の動向を慎重に見定め、サプライチェーンを支えていく」とデンソーの林社長(右)

 トヨタ自動車系の大手部品メーカー7社の2026年3月期業績見通しは、デンソーや豊田自動織機など4社が減収を予想する一方で、営業利益ではアイシンやトヨタ紡織など4社が合理化効果などで増益を予想した。ただ、〝トランプ関税〟の影響は大半が織り込んでおらず、先行きは波乱含みだ。

 デンソーは売り上げ、利益とも過去最高を記録した前期から減収増益を予想する。売上収益は円高による為替換算差で減収を見込むが、営業利益は合理化努力を継続強化するなどして2年連続で過去最高益を目指す。林新之助社長は「今年度は変化への対応力が求められる」とした上で、トランプ関税を念頭に「今後の動向を慎重に見定め、サプライチェーン(供給網)全体を支えていく」と語った。

 アイシンは増収増益を見込む。為替変動に伴う減益要因はあるものの、新製品や電動化製品の投入による収益向上、固定費削減などで増益を目指すシナリオだ。トランプ関税については、価格転嫁のタイミングずれなどを踏まえて200億円程度のマイナス影響を営業損益に織り込んだ。吉田守孝社長は「事業環境は先行き不透明で不確実だが、意思決定はスピーディー、進め方はアジャイル(迅速)に経営する」と話した。

 トヨタ紡織は増収増益を予想した。売上収益は初の2兆円を見込む。中国やアジアなどでの減少を日本や北中南米でカバーする。白柳正義社長は「新製品効果の最大化や再出発となる北米での収益改善活動を着実に進め、安定した収益構造の確立に取り組む」と語った。

 豊田合成は円高や米国の関税リスクを踏まえて減収減益を予想した。トランプ関税の影響については売上収益で200億円、営業利益で50億円と算出した。ただ「関税の直接影響は読み切れないので織り込んでいない」(同社)という。

 ジェイテクトは減収減益を予想。為替影響など外部環境の先行きが不透明な中で、生産性の改善、資本効率の向上を継続する。関税影響については「サプライチェーンの変更も考えていく」(神谷和幸最高財務責任者)と話した。

 豊田自動織機は売り上げ、利益ともに過去最高を記録した前期から一転、減収減益予想となる。産業車両や車両販売の減少、為替などによる下振れリスクを織り込んだ。

 愛知製鋼は増収増益を見込む。「拡販による販売数量の増加と工場の原価低減などの増益要因が上回る」(後藤尚英社長)とした。

 25年3月実績は4社が増収、4社が増益だった。円安が上振れ要因となったほか、原価改善や合理化、固定費削減など各社の企業努力も奏功した。デンソーと豊田自動織機は売上、利益ともに過去最高を記録した。一方、アイシンはパワートレインユニットの販売減で減収、トヨタ紡織は日本や北中南米地域での減損損失により減益を強いられた。