デンソーは、複数の半導体を1つのチップに集約した車載「システム・オン・チップ(SoC)」を2029年にも投入する。高性能SoCは海外の大手半導体メーカーが先行するが、デンソーは車載向けに最適化するとともに、低価格帯も含めた幅広いラインアップを展開し、自動車メーカーの多様なニーズに対応する考えだ。
林新之助社長が23日までに日刊自動車新聞などの取材に応じ明らかにした。林社長は「自動車における半導体の価値の高まりは今後も続くだろう」と予想し「自動運転(AD)/先進運転支援システム(ADAS)、ボディ系、コックピット系、車両運動系とそれぞれの統合ECU(電子制御ユニット)に対し、SoCのラインアップをそろえていく」と語った。
SoCは、小間切れにした複数のチップを接続してパッケージ化する「チップレット技術」を用い、1つのチップ上にシステムを集積させる技術概念を指す。処理能力が向上するほか、歩留まりの改善や汎用性の確保といった利点がある。すでにデータセンター向けなどで実用化されているが、動作条件が厳しい車載SoCの開発や普及が本格化するのはこれからだ。
デンソーは、社内の半導体関連人材を集め、25年1月1日付けで「SoC開発部」を新設する。車載SoCに求められる信頼性や耐久性、安全性などの要件や実装方法などを検討していく。林社長は「SoCジャイアント(大手企業)が持っているものをそのまま使うと、低価格帯の車両ではトゥーマッチ(過剰)になる」と語り、量産車用に最適化したチップを含め、ラインアップに幅を持たせたSoC群を29~30年をターゲットに量産する方針を示した。
自動車メーカーや半導体関連企業による自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA、山本圭司理事長=トヨタ自動車シニアフェロー)にも参画し、開発のスピードを上げる考えだ。
デンソーは、オルタネーター(発電機)や点火制御に用いる半導体の研究開発を1960年代から始め、車載半導体の売り上げで世界5位(21年)に入るなど、車載半導体メーカーの側面も持つ。9月にはローム、11月には富士電機との協業を発表し、12月には米オンセミへの一部出資を発表するなど、将来的な車載パワー半導体の需要増をにらみ、事業体制の拡充を進めている。