EVメーカーはアフターサービスの充実に力を入れる(BYDオートジャパン提供)

 電気自動車(EV)の整備は、今までのガソリン車などと変わらない部分がある一方で、内燃機関車よりも高い電圧を取り扱うなど気を付けなければいけない部分もある。海外メーカーを中心にEVのラインアップが増えており、この中でも新興勢は国内市場の開拓に意欲をみせる。販売体制だけではなく、アフターサービスも充実させ、シェア拡大に力を入れている。

 EVで先行するテスラジャパン(東京都港区)はアフターサービスを全国15カ所にある直営のサービスセンターに加え、必要な工具などを搭載したテスラ車で顧客を訪れ、特定整備の範囲外の作業を行う出張型のモバイルサービスで対応している。こうした体制を取るのは、顧客にとって最適なサービスをどこでも受けられるようにするため。加えて、車の診断や顧客とのやり取りでアプリを使用するほか、オンライン上で必要な整備マニュアルを自ら取得する必要があるため、整備士にはコンピューターリテラシーや探求心を求める。整備士教育もOJTを通じ、技術や知見を教え込んでいる。

 中国・比亜迪(BYD)傘下で日本の乗用車事業を手掛けるBYDオートジャパン(東福寺厚樹社長、横浜市神奈川区)は全国に正規ディーラーを構え、アフターサービスも手掛けている。BYD車の整備に欠かせないのが、専用の故障診断機「VDS」だ。カメラやレーダーの校正作業などはこれがなければ行えない。同社ではパソコンで閲覧可能なトラブルシューティングの方法をまとめたシステムを持ち運び可能なVDSにも搭載し、作業の効率向上につなげる。

 カーエアコンのメンテナンス機器を手掛けるプロステップ(神奈川県茅ヶ崎市)の諏訪茂社長は、EVなどに使われるヒートポンプ式のカーエアコンについての留意点を指摘する。特に、気化熱でフロンガスが凍り、エアコン内に残る「寝込み」と呼ばれる現象が起こると、フロンガスの回収率が低下するという。同社ではエアコン内に高温・高圧のガスを注入して配管の温度を高めて回収しやすくする「ホットガス(HGS)機能」を開発し、課題解決への道筋を示した。諏訪社長は「効率よく回収することが環境保護になる」と話す。

 整備教育の資料制作などを手掛けているB2(小林哲也社長、東京都練馬区)は、独自に策定した研修メニューでEVの技術研修を行っている。その中には経営者や幹部を対象としたマネジメント研修を含まれているが、原則として最初にこの研修を実施する。その理由を津屋剛プロデューサーは、「研修には費用がかかる上、経営者や幹部が教育の必要性などを理解しなければ、先へ進まない」と明かす。また、整備士には「感電を避けるために触ってはいけない場所や安全に関する説明を必ず行う」としている。

 月刊「整備戦略」12月号では特集「EVの扱い方」を掲載します。