地域活性化に向けてeスポーツを活用とする自治体が増えている。なかでも群馬県はいち早く担当部署を設けてその振興に取り組む草分け的な存在だ。現場を率いる木村雅行氏に現状や展望など聞いた。
全国でいち早くeスポーツ振興を目的とした部署を立ち上げた―
「2019年に就任した山本一太知事肝いりのプロジェクトで、20年にeスポーツ・新コンテンツ創出課として誕生した。製造業と並ぶ県内の新たな産業の創出が目的で、その一部にeスポーツを見出したかたちだ。eスポーツは集客力と若者への訴求力が高い。群馬県のブランド力向上と地方創生に結びつくことが期待されている」
どのような取り組みを展開している―
「2020年から、19歳以下の若者をターゲットとした全国規模のeスポーツ大会『U19eスポーツ選手権』を開催している。21年には、eスポーツ大会に不可欠な実況者に着目した全国唯一の大会となる『全日本eスポーツ実況王決定戦』を創設。また同年、社会人を参加対象としたeスポーツの大会『GUNMA LEAGUE(リーグ)』を立ち上げた。同リーグはeスポーツの振興はもちろんだが、社内におけるコミュニケーション活性化と企業間における交流の活性化も大きな目的だ」
「昨年度のリーグはオフラインで夜間に実施した。1チーム(社)2人以上で構成し、試合前の名刺交換が大会の特徴である。教育、金融、通信など様々な分野からご参加頂いており、累計参加チーム数は延べ100チームに迫っている。交流が深まり、自発的にオンラインで対戦しているケースもある。リーグ戦での接点をきかっけに、ビジネス上の具体的な契約へと発展したケースもあると聞いている。目にみえないところでの効果が現れ始めている」
eスポーツの普及発展に向けて土壌が育ってきた―
「最近では県内市町村などから大会や体験会を開催したいなどの問い合わせが増えている。イベントを継続的に開催していくことはコミュニティの創出につながる。例えば高齢者の場合、イベントに参加することで他者と交流が生まれ、社会参加につながる。県では障害者を対象としたeスポーツイベントの支援も行っている」
その他にどのような支援を展開している―
「大会や体験会を開催する市町村や学校などから問合せをいただくことが多いが、主にイベント開催のノウハウを提供することなどを行っている。eスポーツタイトルの使用にはメーカー許諾が必要となるため、許諾申請の方法を案内するなど、支援内容は多岐に渡る」
「デジタル人材の育成を目的とした県営施設『tsukurun』 (ツクルン)にゲーミングPC等を常設し、講座などの開催を通じて触れてもらえる機会を創出している。一部の機材購入の財源に企業版ふるさと納税制度を活用している」
eスポーツにおけるeモータースポーツの立ち位置は―
「圧倒的にリアルと重なり合う部分が多いのが魅力だ。参加者の年齢層も高校生、社会人、シニアと幅広い。群馬県は自家用車の1人当たりの保有台数が全国1位であり、自動車ファンも多い。eモータースポーツの大会や体験会は、運転免許証を返納した主に男性シニアに運転の楽しさを提供できる場としての側面もある」
今後の展望について―
「持続性を考えた場合、県主導から民間主導へとシフトしていくことが望ましい。最終的には県に関係なく各地で大会が開催されるようになってほしい。昨年、今年と県内で『UNIZONE』関係の大会・イベントが開催されるなど、群馬県を舞台としたeモータースポーツの大会・イベントが相次ぎ開催されている。将来的にGUNMA LEAGUEとの連携が模索できればと捉えている」