日刊自動車新聞社は、「第3回整備事業者アワード2024」の受賞事業者11社を発表した。同アワードは、自動車整備を取り巻く環境が著しく変化する中、今後の整備市場の活性化に向けて〝手本〟となり得る取り組みに光を当てるのが狙い。受賞各社について、全11回の連載でリポートする。
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日刊自動車新聞社大賞は、イノベーション領域・先端整備賞から車検・鈑金デポ(上松禎知社長、千葉県浦安市)が受賞した。車検・点検・一般整備、板金塗装、車両販売、保険の取り扱いのほか、エーミング(機能調整)に関わる各種技術研修などをグループ内外に提供している。
同社が次世代整備や先進運転支援システム(ADAS)のエーミングに注力するきっかけは、2020年4月に始まった特定整備制度だった。以前は「エーミングは外注」(上松社長)と割り切っていたが、同制度の施行を前に頭を切り替えたという。念頭に置いたのは「何をすればオートバックスグループとして強みを発揮できるか」(同)だった。「よそがやらないことをやることで一歩先んじる」(同)をポイントに考えた結果が〝電子制御装置の匠(たくみ)〟になることだった。どうせやるならば「誰も追い付けない領域に上りつめる」ことを重視した。ただ、そこにたどり着くためには社員の協力が欠かせない。そこで、上松社長は19年に大改革に向けて動き出した。
その一つがエーミングやガラス交換の内製化だ。これまで経験したことが少ない作業に戸惑う社員もいたものの、上松社長は「1年間俺にだまされてくれ。22年4月までに、この会社を対外的に認められる会社にする」と言い切った。そして、汎用スキャンツール(外部故障診断機)として市場で流通している全メーカーのモデルを購入。知見を深めるにつれて「汎用診断機の限界」(同)を感じ、自動車メーカーの純正スキャンツールの正規品を導入した。
同時に、社員の技術・知識の向上も課題となったという。そこで開始したのが社内教育動画の作成だ。社員自身が題材に対して精査・調査し、撮影、編集して社内で共有。その後、整備業界に広く発信したいとの思いから動画共有サービス「ユーチューブ」でも公開した。ポイントは「メカニックが検索してヒットする業者目線にした」(同)ことだ。これらの知見・知識の蓄積により、20年にオートバックスグループ内の研修を、23年に外部事業者に対しても研修事業を開始した。上松社長は「一方通行の研修ではなく、参加することで身に付く研修」と位置付け、「知識の輪を広げる」活動を積極化している。
〈受賞コメント〉
上松禎知社長
19年に改革を始めた当初から企業価値を高めるということを重視してきた。会社が有名になれば従業員満足(ES)が向上し、働くモチベーションにもなるはず。年間休日と給料が増え、残業が減る会社にしたいという思いで取り組んでいる。この取り組みが結果的に認めていただけ、うれしく感じている。社員には「知識でご飯は食べられる」と伝えている。今後も知見の蓄積を止めず、同業他社やお客様に頼られる会社づくりを行っていきたい。
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