国産車から輸入車まで幅広い車種の整備に対応するユーロカーズ(松山伸一郎社長、鹿児島県鹿屋市)は、自動車整備士の待遇改善に力を入れている。輸入車の中古車販売も手掛けているが、整備士が成約までの〝きっかけづくり〟を行った場合にはインセンティブを付与している。「整備士だけで信頼とクルマを売る」をモットーに、着実に業績拡大している。
松山社長は自身の経験から、整備士の給与水準の低さや待遇改善の必要性を肌身で感じてきた。整備業界では例えば、医療業界のように診断だけでは費用を請求することが難しいのが現実だ。「故障の原因を突き止めた整備士をしっかりと評価したい」と考えてきたものの、「給与のほかに報酬や対価を支払う手段がなかったのが悔しかった」と、以前の同社の環境を振り返る。そこで、「社員に還元したい」という強い思いを原動力に、インセンティブ制度の導入を決めた。
中古車の販売台数は年間100台前後であり、整備士が成約に関わる割合は全体の半数を占めている。同業者からは「なぜこんなにも売れるのかと聞かれることもしばしばある」というが、整備士にノルマや販売目標を設定しているわけではないという。「彼らは車を売るという意識をあまり持っていないはず」とし、「整備のプロフェッショナルとして、お客さまが良い判断ができる材料を提供しているだけ」との理由を明かす。
20歳から輸入車ディーラーの整備士として経験を積んだ松山社長は、25歳の時に国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊に参加し、アフリカへの派遣を経験した。現地の学校で整備について指導する際、教材用の車両や部品、資料が不足していることが多く、現地の自動車ディーラーや整備工場に協力を仰ぐ必要があったという。ここで、「現地の人の協力が必要不可欠であり、人との関わり合いの重要性を改めて感じることができた」と話す。そこで、帰国後に顧客とのコミュニケーションが重要となる新車販売についても学びたいと考え、営業への転身を決断した。
さまざまな経験を生かしたいと、父親の松山実会長から整備工場を引き継いだのは36歳の時。その後、徐々にスタッフを増やしながら、販売事業を拡大していった。地道な努力を積み重ね、今では整備と販売の業績が毎年10%以上の成長をみせるまでになった。従業員の給与も毎年5%ずつ高めるなど、還元し続けている。
今後の在り方について「自社ですべて完結できることがベスト」としている。板金塗装(BP)は現在、外注しているが、「将来的には内製化したい」とするなど、さらなる成長を目指している。
〈受賞コメント〉
松山 伸一郎社長
お客さまに向けた日ごろのメンテナンスのアドバイスの時には、今後の維持費の見通しを伝えるよう心掛けている。診断の結果、高額修理となり、車の買い替えとなるケースもある。原因を特定しても完治できなければ〝整備士魂〟は不完全燃焼となるだけではなく、その診断に費やした時間と対価をお客さまから直接いただくわけにはいかない。
ただ、こうした苦労を評価するため、買い替えとなった場合には、販売奨励金を整備士に付与している。当社には営業マンが居ないが、整備の現場スタッフとお客さまの信頼により、販売台数を維持している。
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