廃車由来の資源を再び新車に用いる「水平リサイクル」の拡大に向け、再利用のしやすさを重視した設計が自動車メーカーの間で広がる。ホンダは1車種あたり1千グレード(銘柄)以上ある樹脂を次世代車では統廃合する。スズキも軽量化と並行して樹脂銘柄を削減する。欧州では、新車に使う樹脂の一定比率を廃車由来とするELV(使用済み自動車)規則が施行される見通し。日本でも再生材の使用義務化に向けた議論がある。素材や自動車部品メーカーも対応を迫られそうだ。
ホンダは、2026年以降に発売する電気自動車(EV)「ゼロシリーズ」などで樹脂部品を統廃合していく。「ホンダe」では現在、25種類1千銘柄以上の樹脂を用いているが、今後は「ドア内装」といった部品ごとに単一素材で作ることを検討する。分別の手間をなくし、再利用しやすくするのが狙いだ。
スズキも、30年代初頭に現行車より約100㌔㌘軽くする取り組みと並行し、使用する素材の統廃合を進めていく。ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)などの樹脂は1品種1~2銘柄に絞る方針だ。
自動車部品の大半は新品材料(バージン材)からつくられ、汎用樹脂の耐熱性などを高めたエンジニアリングプラスチック(エンプラ)も多用される。自動車は過酷な自然環境下で長期間使われ、場合によっては故障や事故につながるため、これまではさまざまな素材を組み合わせて意匠性や性能、コストの最適解を探ってきた。しかし、再生利用の観点では品種や銘柄の多さは分別の手間など再生コストの増加につながる。
スズキの鈴木俊宏社長は「例えば樹脂のトリム(内装材)はなくせないのか。地球環境を考え、どんなものを要求するのが正しいかやっていかなければ」と話す。サーキュラーエコノミー(循環型経済)を意識した設計へと発想の転換が求められ始めた。
欧州では、廃車由来部品の使用を義務付ける動きがある。31年に施行される見通しのELV規則は、新車に使われるプラスチックの25%以上を再生品とし、このうち25%以上を廃車由来とすることを求めている。日本の経済産業省も、再生プラスチックの使用義務化に向け、利用計画の策定や定期報告を求めることを盛り込んだ有識者会議の中間報告を公表している。